炎の一筆入魂BACK NUMBER
防御率2.13でも6試合1勝2敗「求められるのは勝利のみ」広島カープ・大瀬良大地は直面する試練をどう乗り越えるのか「“木鶏”にはほど遠い」
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/12 17:00
ここまで6試合に先発し防御率2.13ながら1勝にとどまっている広島カープの大瀬良大地
「自分の仕事をしっかりまっとうして、今日頑張れたなと思えるような内容で終えることが大事。勝てばうれしいですし、負けたら悔しいですけど、自分の仕事ができたというものがあれば次に向かって行く気持ちも保てる」
まだまだ“木鶏”にはほど遠い
自分ではコントロールできないものを見るのではなく、自分で変えられるものに集中する。昨季から攻撃のリズムにつながるように、投球テンポを上げるように意識した。特に打者との駆け引きのないイニング間の投球練習は短時間で終わらせてきた。打席では9番目の打者として粘る姿勢を見せ、マウンド上の立ち居振る舞いも意識する。今季最長の8回を投げた4月16日の中日戦では、マウンド上で気迫を前面に出して野手陣に無言のメッセージを送った。
「自分の数字はあまり見ないようにしています。でも、やっぱり選手としての欲なのか、この数字を上げたいなとか、ここはもっと良くしたいと思うところが出てくる。そう考えると、まだまだ“木鶏”にはほど遠いなって思いますね」
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“木鶏”とは、恩師である九州共立大の仲里清監督(当時)から授かった言葉。「何ものにも動じず、相手を圧する、最強の闘鶏」を意味し、プロ12年目の今もなお胸に刻んでいる。
6度目の登板となった5月7日、ヤクルト戦。またしても勝ち投手の権利を得ながら中継ぎ陣が追いつかれ、2勝目は消えた。それでも「チームが勝てたので、良かったです」と、安堵から思わず笑みがこぼれた。来月34歳となるシーズンでも、まだやるべきこともやれることもある。野球の神様が与えてくれなかった白星は、もっと強くならなければいけないというお告げなのかもしれない。

