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「侍ジャパン相手に6回1死完全」“台湾新星”古林睿煬が日本ハム3戦目のマダックスで覚醒か…巨人電撃移籍リチャードは悩ましい“二軍の大記録”問題
posted2025/05/12 17:02

いわゆる「マダックス」で初完封勝利を挙げた日本ハムの古林睿煬(グーリン・ルェヤン/24歳)
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
古林睿煬(グーリン・ルェヤン/24歳)が、日本のファンに強い印象を残したのは2023年11月16日、東京ドームで行われたアジアチャンピオンシップだった。
侍ジャパン相手に完全試合ペースの好投をしたことも
侍ジャパンの井端弘和監督にとっては実質的なデビュー戦で阪神の桐敷拓馬、西武の隅田知一郎などフレッシュな顔ぶれで優勝した大会だった。その日本を相手に、古林は6回1死までパーフェクトの快投を見せた。
観客席から見る限り、筋肉の盛り上がったマッチョな体形にもかかわらず、繊細な投球でコントロールがいいのが印象的だった。
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「古林は、母方の姓の『古』と父方の姓の『林』を合わせた姓です。双姓と言って原住民(※台湾では差別語にあたらず、公式用語となっている)ではよく見られます」
筆者は毎年、台湾で行われる「アジアウインターリーグ」を観に行くが――この年、現地のジャーナリストが話してくれたことが印象に残っている。台湾は単一民族のように見えるが、第二次世界大戦前に中国大陸から台湾に移住した「本省人」と、戦後移住した「外省人」、そして台湾に先住していた「原住民」の3つに大別される。
原住民は人口の2.4%であるにもかかわらず、スポーツの世界での活躍が目立つ。その代表格が今はファーム球団オイシックス新潟にいる陽岱鋼。日本ハム、巨人で活躍した陽は、台湾の国際試合の貴賓席に姿を現すと、観客が立ち上がって拍手を送り、試合が中断するほどの大スターである。
NPBやMLBで活躍した台湾出身選手は数多い。NPBでは古くは郭泰源、郭源治、呂明賜、大豊泰昭(陳大豊)、近年では前述の陽岱鋼、現役では楽天の救援投手である宋家豪、MLBではヤンキースで最多勝をとった王建民らが筆頭格である。
王柏融が期待に応えられなかった日本ハムだが
しかし古林睿煬はこれらの先人とはキャリアが違う。古林は、台湾プロ野球(CPBL)出身だが、これまで日米で活躍した台湾人で、CPBLを経由した選手はいなかった。
CPBLの創設は1989年。それ以前の選手はもちろんのこと、それ以後もCPBLを経ずに海外の野球に直接身を投じる選手が多かった。
それはなぜか。