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防御率2.13でも6試合1勝2敗「求められるのは勝利のみ」広島カープ・大瀬良大地は直面する試練をどう乗り越えるのか「“木鶏”にはほど遠い」
posted2025/05/12 17:00

ここまで6試合に先発し防御率2.13ながら1勝にとどまっている広島カープの大瀬良大地
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前原淳Jun Maehara
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JIJI PRESS
大瀬良大地は今季6試合目の登板を前にした5月7日の朝、宿舎近くの神社を訪れた。徳川家康が戦勝祈願をしたとされる神社で、自身も必勝を祈願した。流れを変えるために自分ができることをと思ったら、自然と足が向いていた。
気持ちが重たいまま5月を迎えていた。それまで5試合に登板して防御率1.97。4試合でクオリティースタートを記録し、達成できなかった試合もリードを守ってマウンドを降りていた。それでも個人成績では1勝2敗、チームの勝敗では1勝4敗と黒星が先行していた。
右肘手術から復帰した昨季は、6月7日のロッテ戦でノーヒットノーランを達成。防御率は自身初の1点台となる1.86をマークした。それでも勝ち星は6勝止まり。1試合平均の援護点はわずか1.76点で、12球団で20試合以上先発した43投手のうち、もっとも援護に恵まれなかった。シーズンを通して3点以上の援護点は3試合しかなく、2点以上の援護があった試合は7試合で6勝0敗だった。相手先発との巡り合わせや打線とのかみ合いが悪く、規定投球回以上で防御率1点台での6勝はプロ野球の歴史の中でも最少勝利数だったという。勝ち運に見放されているのだ。
大瀬良に求められるのは“勝利”のみ
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今季は昨季までともに先発の柱を担った同期の九里亜蓮がFAでオリックスへ移籍した。3本柱となった森下暢仁と床田寛樹は週末のカードに回り、大瀬良には開幕2カード目の2戦目の先発が託された。
6連戦の初戦となる火曜日は、各球団の主戦投手が先発する傾向にある。そのため、開幕前は大瀬良が「火曜日の先発」と予想する声も多かった。だが、ここまでは玉村昇悟や森翔平らが火曜日の先発に起用されている(玉村は雨天で実際の登板はなし)。背景には、新井貴浩監督が選手に求める「強さ」を主戦相手に身に付けてもらいたいという思いがある。一方で水曜日先発の大瀬良に求められるものは、“勝利”のみ。昨季勝ち星が伸びなかったことに対する新井監督の温情ではなく、大黒柱に課せられた新たな使命である。