炎の一筆入魂BACK NUMBER
防御率2.13でも6試合1勝2敗「求められるのは勝利のみ」広島カープ・大瀬良大地は直面する試練をどう乗り越えるのか「“木鶏”にはほど遠い」
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/12 17:00
ここまで6試合に先発し防御率2.13ながら1勝にとどまっている広島カープの大瀬良大地
昨季リーグ優勝を果たした巨人は、ベテラン菅野智之(オリオールズ)をカード初戦ではなく木曜日に配置し、土曜、日曜とローテーションを調整しながら白星を積み重ねた。今季の大瀬良にも、同様の役割が期待されている。
だが、今季もまた巡り合わせに恵まれない。シーズン初登板となった4月2日ヤクルト戦は立ち上がりに1点を失いながらも、打線が2回にファビアンの2ランホームランで逆転。5回まで最少失点でしのぎ、勝ち投手の権利を得てバトンを中継ぎに託した。しかし、8回に同点に追いつかれ、延長戦の末に敗れた。自身の今季初白星を逃しただけでなく、チームの勝利に貢献できなかった。
防御率1点台でも勝ち星なし
次戦からは2試合続けて中日の柳裕也との投げ合い。敵地での4月9日は6回1失点で勝ち負けつかず、場所を本拠地マツダスタジアムに移した4月16日は8回2失点も援護がなく、敗戦投手となった。3試合で防御率1.89ながら白星なし。防御率1点台の投手で勝ち星がないのは、大瀬良だけだった。
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今季4試合目の登板となった4月23日のヤクルト戦は1失点でようやく初白星を得たが、追い風は吹かなかった。続く4月30日は開幕から連続無失点投球を続けていた巨人・山崎伊織との投げ合い。先制点が勝敗の行方を左右する投手戦で5回まで4安打無失点に抑えたが、6回に2つの四球から招いたピンチで適時二塁打を浴びて2点を失った。内角に投げきれなかった1球が、勝利への道筋を断ち切った。
「フォアボールを出さないように、ヒットを打たれないように、ゼロで抑えられるように頑張ります」
試合後、珍しくコメントに感情がにじんだ。
我慢の日々を過ごすのは今に始まったことではない。プロ入り1年目で新人王を獲得し、次代のエースと期待されながら、2年目はチーム事情から中継ぎに配置転換された。イニングまたぎも3連投もこなし、3年目を前に右肘を痛めた。その後も2度の右肘手術を経験し、脇腹や太もも裏の故障にも見舞われた。長丁場のペナントレースを万全のコンディションで完走できる選手などいないが、大瀬良ほど傷だらけで走り続ける投手も珍しい。
体が思うように動かず、納得のいく投球ができない中で投げ続けたシーズンもある。肉体がギリギリの状態でも、強い精神力と技術を磨いて乗り越えてきた。コンディションに不安があろうが、援護がなかろうが、今自分ができることにすべてを注いだ。
