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ぶら野球BACK NUMBER
ヤクルト野村克也監督に批判殺到「なぜ落合が外されるんだ?」巨人・落合博満40歳“まさかの落選事件”「野村監督は落合が嫌いなようだ」
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKYODO
posted2024/11/23 11:01
1994年7月26日の阪神戦で。一塁ゴロをエラーし、肩を落とす落合
「落合を入れれば、駒田(横浜)、広沢克(ヤクルト)も入れたくなる。文句なしの成績も出ていないし、心を鬼にしてやめた。(中略)いつまでも落合の時代じゃないよ」(週刊ベースボール1994年8月1日号)
全セを率いるヤクルトの野村克也監督は、落選の理由を淡々と語ったが、巨人の須藤豊ヘッドコーチは「ナンセンスだ。すべてのスターが集まるからオールスター。何かあるとしか思えない」と報道陣の前で怒りを露わにした。G党で知られる大相撲力士の水戸泉も「自分が同じような立場だったらどう思うでしょうね」とガッカリ。これには評論家からも批判の声が相次ぎ、元阪神の四番打者・掛布雅之は「週刊文春」のコラムで、落合の落選にこう疑問を呈している。
「野村監督はあくまで『成績重視』を理由にしているが、たしかに数字は落ちているとはいえ、恥ずかしいものではない。首位を独走するチームの四番としての存在感を考えた時、落合落選は理解に苦しむ。(中略)リーグの顔と呼ばれる選手と同じベンチに座って野球をすると、頭から冷水をぶっかけられたような刺激を受けるものだ。今の球界では落合がその存在であるだろうし、選ぶ側は成績重視の一方で、こういった要素も考慮すべきではないだろうか」(週刊文春1994年7月21日号)
「野村監督は落合が嫌いなようだ」
今となっては“名将野村”のイメージが強いが、ヤクルト時代は長嶋巨人に対して知将の仮面を脱ぎ捨て、ときに感情的になり、度々物議を醸していたのも確かだ。元ホームラン王の田淵幸一も自身の連載「田淵幸一の新球界一刀両断」の中で、「私はこの騒ぎで野村監督の意外な一面を見た」と評している。
「ID野球の権化、策士などといわれているが『ノムさんは案外、正直者だなあ』と思ったのだ。いまの巨人の状況を考えると、落合をオールスターに出したほうが他球団は有利なはずだ。40歳の落合はバテバテ。もともと7月には弱いタイプだが、今年は特に疲れが目立つ。(中略)確かに野村監督は落合が嫌いなようだ。その正直なところが露呈して、珍しく球宴後をにらんだ計算まではずしてしまったのだ」(週刊現代1994年7月30日号)