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大阪桐蔭「最強世代」あの夏のことは「正直、1ミリも思い返すことはない」…ロッテの“夏男”藤原恭大の現在地と、今も生きる西谷監督の教え
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/19 17:01
大阪桐蔭高時代の藤原
今も残る大阪桐蔭・西谷監督の教え
最後に過去を振り返ることのない藤原のマリーンズに入団したばかりの頃に聞いた高校時代のエピソードを紹介する。なぜ大舞台でも臆しないのか。多数のカメラに囲まれた中でも意識することなく自分のパフォーマンスを発揮できるのか。18歳とは思えない堂々たる雰囲気を感じて、聞いたことがある。
「それは高校時代の指導のおかげだと思います。カメラとかお客さんとかは意識しないのではなく、意識しながらやっていましたから」
藤原はそう言って大阪桐蔭高校時代の西谷浩一監督の指導方法に感謝した。名門中の名門である母校のグラウンドには毎日のようにマスコミが取材に来ていた。通常であれば「気にせず練習をしろ」と選手に指示するところだが、西谷監督は違った。
「テレビカメラを意識して…」
「甲子園では多くのファン、テレビカメラの前でプレーする。いつも見られていると思って練習をしろ。せっかくの機会なのだからテレビカメラを向けられていることを意識すればいい」
この言葉が高校入学したばかりの当時の藤原の心に響いた。元々は人見知りで目立つことは好きではなかったが、目標としている甲子園優勝のためには避けては通れない道であることを理解した。だからマスコミの姿をグラウンドで見つけると、ここぞとばかりにアピールした。人前でどのようすれば能力を発揮することが出来るかを考えるようになった。
「緊張を楽しめるように」
「慣れたからといって大観衆の前で緊張しないということはさすがにありませんでした。だから、緊張する中でどこまで自分のプレーを出来るかを考えながら取り組みました。甲子園に何回も出させてもらって、いい緊張感を感じることが出来るようになった。緊張をある程度、楽しめるようになりました」と話をしてくれたのが、とても印象に残っている。
長丁場のペナントレースを戦い抜くには、夏場に強い選手が必要だ。そして大舞台で力を発揮できる選手が、正念場でチームを勝利へと導く。藤原恭大、24歳。スターの才能を誰よりも秘める若者がマリーンズにはいる。