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中日からのトレードで人生が激変「誰が想像できた?」日本ハム・郡司裕也がものにした「一瞬のチャンス」北の大地で愛される“郡司節”秘話
text by
中田愛沙美(道新スポーツ)Asami Nakata
photograph byKYODO
posted2024/08/01 11:01
今やファイターズの顔として活躍する郡司。唯一無二のキャラクターだ
突然告げられたトレード
プロ4年目を迎えた2023年シーズン。野球人生の転機が訪れた。交流戦の直後、ファイターズへのトレードを告げられた。新天地デビューは6月30日のオリックス戦。「2番・指名打者」で先発出場し、1回の第1打席で相手エース・山本由伸(現ドジャース)の初球を捉えて、中前打を放った。
7月4日のソフトバンク戦では、プロ初本塁打をマーク。明るい性格ですぐにチームに溶け込み、安定感のあるプレーでアピールを続けた。その姿は新庄監督が「もう15年目かな(笑)」と表現するほど。「やっぱりキャッチャーですね。球種を絞って一発で捉えていくところは。ベテランの姿にしか見えなかったですね。頼もしいです」と指揮官を唸らせた。
報道が新庄監督の目にとまり…
加入1年目は本職の捕手のほか一塁、外野、さらに「野球人生初」という二塁にも挑戦し、打撃各部門でキャリアハイを更新した。多彩なポジションをこなせるユーティリティーぶりを発揮したが、目標の規定打席に到達するためにはレギュラーをつかまないといけない。「ポジションの問題が……」と常々口にしていた郡司に、今年2月の春季キャンプで思わぬチャンスが巡ってきた。
正三塁手の筆頭候補だった清宮幸太郎内野手がキャンプ直前に怪我で離脱。サード挑戦に意欲を見せたという報道が、新庄監督の目に留まったのだ。練習中に「グン、記事見たよ。明日からサードやってみようか」と声を掛けられ、「まさか、本当になるとは思わなかったですけど」とびっくり仰天。「小2で野球を始めたときはサードだった」という原点のポジションで、レギュラーを目指すことになった。
守備職人のグラブを借りて
昨季限りで引退した守備の名手・谷内亮太内野守備走塁コーチにグラブを借りて始まった新たなチャレンジ。開幕スタメンこそ逃したものの、勝負強いバッティングで三塁の定位置を奪取した。
自らを「サード初心者」と称する捕手登録の郡司だからこそ、試合中に心がけていることがあるという。それは守備中の声掛けだ。キャッチャーがタイムをかけられる回数は決まっている。だからピッチャーがピンチを背負うと、すかさずマウンドへ向かう。ファイターズの内野には、ドラゴンズ時代からの同僚でやはり捕手登録のアリエル・マルティネスもいる。「キャッチャー3人が(投手を)囲っている」という頼もしい状況は、今シーズンのチームの好調と無関係ではないだろう。
ファイターズの“名誉生え抜き”
試合の流れを見極めるのは、簡単なことではないが、郡司はサラリとこなす。ベテランのような雰囲気を醸し出し、チームに馴染む姿はまるでファイターズの生え抜き選手のよう。本人も「生え抜き? 違いましたっけ?」と茶目っ気たっぷりに反応する。