酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「サイ・ヤング賞腕カイケルがロッテに来るけど」バウアーはスキャンダル禍で来日、ドジャースで最多勝ペニーは…メジャー大物投手の日本成績
posted2024/08/01 11:02
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Elsa,Adam Hagy/Getty Images
「クーチェルとは、俺のことかとカイケル言い」
と川柳でも読みたくなるような、難しい読み方の左腕投手ダラス・カイケル(Dallas Keuchel)が、ロッテに入団する。メディアによってはカイクルと表記しているところもある。MLB、NPBともにトレード期限になっている7月末の発表だった。
サイ・ヤング賞にワールドシリーズ制覇…抜群の実績
MLBでの実績は超A級だ。
アーカンソー大から2009年、ドラフト7巡目(全体221番目)でアストロズに入団。大学の10年先輩に、同じく左腕で2008年のサイ・ヤング賞投手のクリフ・リーがいる。通算143勝。またこれも左腕の通算67勝ドリュー・スマイリーも同世代だ。
カイケルは、身長191cm93kg。メジャーデビューの2012年当時から「遅い速球」を思い切って内角に投げ込む度胸ある投手として知られていた。球速は145km/h前後。球種は豊富で、ツーシーム、フォーシーム、カッター、カーブ、チェンジアップを投げ込んだ。ただ「どれも一流とは言えない」と言われていた。
しかし2014年、シンカーボールを武器にゴロアウトを量産し12勝、下位球団アストロズのエース格になる。
そして翌2015年、そのシンカーにさらに磨きがかかり、20勝8敗、防御率2.48でMLB投手にとって最高の栄誉であるサイ・ヤング賞を受賞。トレードマークは「黒いサンタクロースひげ」。この年、ヤンキースとの対戦は、9回完封、7回零封、ポストシーズンでも6回零封と3試合、22イニング無失点。屈指のヤンキースキラーになった。そしてアストロズはカイケルの活躍でポストシーズンに進出した。
翌2016年は制球に苦しみ9勝止まりだったが、2017年はシンカーとスライダーで再びゴロの山を築き14勝、この年シーズン中に加入したジャスティン・バーランダーとのダブルエースで、アストロズ史上初のワールドシリーズ制覇の立役者のひとりとなる。翌2018年も12勝を挙げ、オフにFAとなる。
ホワイトソックスで一度は息を吹き返したが
ところがFA市場ではカイケルのシンカー、スライダーの精度が悪化したことがデータで明らかになり、2019年シーズン開幕後も所属が決まらず。6月になってブレーブスと単年契約するも、腰痛に悩まされ8勝に終わった。
2020年、カイケルはホワイトソックスで息を吹き返す。