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野ボール横丁BACK NUMBER
「廃校になった小学校を野球部寮にしました」過疎地の高校野球部は今…“毎年300人が減少する町”から甲子園出場「監督は元仙台育英の名将」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/14 11:05
今春のセンバツ甲子園、33年ぶりに出場した学法石川高(福島)
佐々木 ここではそれはもう通用しない。昔は、たとえば聖光(学院)とどちらか迷っているんですけどと言われたら、どうぞ、どうぞ、聖光に行ってくださいと言ってたんですけど、ここでは是非、うちに来てくださいと言わなきゃいけない。選手を見に行くまではしないんですけど、見学に来てくれたときに「よかったら来てくれないかな」って。口調が変わりましたね。学法石川で野球をやりたいと言ってくれた子は、もう、その時点でかわいくて仕方ないんですもん。
――基本的に寮生活になるわけですか。
佐々木 ここに通える選手は、そういないですから。どこの部も寮は、使わなくなった小学校や老人ホームを譲り受けて、なんとかやっている状態です。野球部は廃校になった小学校を改修して寮にしました。野球部、サッカー部、陸上部で人を集めている学校なので。
――陸上部と自転車部は名門なんですよね。
佐々木 陸上と自転車は全国でもトップクラスです。あと、ゴルフ部もけっこう強いんですよ。サッカーも強いんですけど、福島には絶対王者の尚志高校がありますからね。尚志になかなか勝てない。数年前、1回だけ勝って冬の選手権に出場したんですけどね。
――この春、学法石川は久々に甲子園に出ましたけど、その前となると1999年夏まで遡るんですね。
佐々木 だから、いつも野球以外は全部強いんですって言っているんです。野球部は応援する部です、って。応援する部から応援される部へ。それが今の目標なんです。
「あなたにあいさつする必要性を感じません」
――この春、オールドファンたちは喜んだのではないですか。
佐々木 でも、甲子園で勝てなかったんでね(1回戦で健大高崎に0−4で敗れる)。うちはこれまで春夏通算で13回甲子園に出ていますけど、ほとんどが1回戦負けで、最高でも2勝しかしたことがないんですよ。だからOBたちは僕には何か言いにくいというのがあるのかもしれませんね。
――佐々木さんは仙台育英で二度、決勝の舞台に立っていますからね。
佐々木 僕がくる前、監督がころころ替わった時代があるんです。OBが口を出すから、うまいこといかなかったんでしょうね。僕が監督に就任したときも、いろいろ言われましたよ。ここはこう戻して欲しいとか、標語が掲げてあってそれも外してはいけないとか。次の日、外しましたけど。
――いきなり衝突したわけですか。