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敏腕スカウト「(全国でも)1番か2番じゃないですか」…北陸で見つけた181cm、76kg隠れた“プロ注遊撃手”「投高打低のプロであのスピードは魅力」
posted2024/07/16 06:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
チーム提供
金沢高が、夏予選前の最後の練習試合を、帝京長岡高と行うことは、2カ月近く前から聞いていて、大きな楽しみにしていた。
金沢高・齋藤大翔遊撃手(3年・181cm76kg・右投右打)vs帝京長岡高・茨木佑太投手(3年・187cm95kg・右投右打)。
全国トップクラスという表現がふさわしい2人の逸材高校球児。そのがっぷり四つの闘いが見られるまたとないチャンスに、金沢高には右の快腕・山本悠人投手(3年・179cm74kg・右投右打)まで控えている。
試合前のアップ、外野フェンスに沿って走る帝京長岡高・茨木佑太投手。ネット裏から100mも向こうなのに、その姿で大きさがわかる。
近くに行ってみる。腰回りから大腿部にかけての太さに驚く。大きなストライドでグイグイ走っても、肩が揺れない、頭が動かない、距離が伸びてもボディバランスに乱れがない。187cm95kg……野球の選手でもいいが、ラグビー全日本のフォワードのイメージにも、ぴったりハマる。
さらに、キャッチボールから遠投。体を振って、反動をつけて投げようとしない。両肩の延長線上でテークバックがなされて腕が振られるから、腕の振りの軌道も球道も、安定している。
茨木投手がブルペンで投げ始める。
スカウトが1人やって来て、捕手のすぐ横に腰を下ろして、球道に目を凝らす。
「今のフォーク?」「いえ、チェンジアップです」
間近で球道を見つめ、ネット越しに、捕手に球種を確かめる。スカウト活動とはこうした地道なものだ。
プロ注同士の激突となった「北陸の一戦」
試合が始まって、初回、立ち上がりの茨木投手。リリースのタイミングが合わず、ボールとストライクがはっきりしている。それでも茨木投手が「さすが!」と思わせるのが、ボールが2つ先行してもそこからカウントを立て直すボールに隙がないことだ。スライダー、カットボール、あるいはカーブという変化球を低めに集めてファールを打たせたり、凡打に打ち取ったり、バッティングカウントで失投がない。
「不利なカウントからも、自分、変化球でカウント整えられるだけの指先感覚あるほうなんで、そこはあんまりプレッシャーにはならないんです」
前に立たれると、見上げるほどのユニフォーム姿。骨格が大きい。