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「そんなこと、できるんですか?」清原和博が甲子園100回大会に向けた特別な思い「息子が生まれたとき、この子が高1になったら…」

posted2022/07/30 17:02

 
「そんなこと、できるんですか?」清原和博が甲子園100回大会に向けた特別な思い「息子が生まれたとき、この子が高1になったら…」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2016年に覚醒剤取締法違反で逮捕され、執行猶予中だった清原和博(2018年撮影)

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

 「おれ、やっぱり清原が好きなんだよ」すべては編集長のその熱いひと言から始まった。甲子園で通算13本塁打を放ち、プロ野球でも525本塁打を放ったスーパースターはなぜ、薬物の魔力にはまってしまったのか。清原和博が覚醒剤取締法違反で逮捕された2016年から4年にわたって取材してきた著者がみた”堕ちた英雄”の弱さと矛盾とは? 
​   ベストセラー『嫌われた監督』で大宅賞、講談社ノンフィクション賞、ミズノスポーツライター賞の3冠受賞を果たした作家・鈴木忠平氏の待望の新刊『虚空の人  清原和博を巡る旅』より一部抜粋してお届けします。(全3回の3回目/#1#2を読む)

 私が初めて清原と顔を合わせたのは2017年の初夏だった。逮捕されて以来、世間から身を隠してきた清原にインタビューをすることになったのだ。

 あの新幹線の電話から10カ月が経っていた。

   インタビューの前に私と編集長は2人の男と会っていた。最初に指定されたのは六本木のカフェで、そこにはマネージャーとして窓口になっているという人物がいた。

「清原はうちで面倒見とるんです」

「清原はほとんど人と会っていない状態だから、あんまりプレッシャーになるようなことを訊いてもらっちゃあ困りますよ」

 髪を金色に染めたラフな服装のその人物はまず釘を刺した。それから私たちを事務所のボスに引き合わせるため、近くのホテルへ向かった。

 天井の高いホテルラウンジで待っていると、白髪と浅黒い肌が印象的な老紳士が現れた。芸能事務所の会長として世に名を知られているその人物は異様に大きな眼で私たちを見た。

「みんな清原の周りから離れていきました。いまはうちで面倒見とるんです」

 権力者にしては傲慢なところのみえない静かな口調だった、それでいて強制力を感じさせる響きがあった。

「よろしければ社会に戻るために力を貸してやってください」

 老紳士の言うことと、私が書こうとしていることにはわずかに齟齬があるような気がしたが、私たちは頷くしかなかった。

 最後にマネージャーらしき人物が付け加えた。

「なるべく人目につかない場所でやらせてもらいます。それに、あまりにも体調が良くない場合はキャンセルということもありますから」

 清原はまるで壊れた人形のように扱われていた。自らの意思に関係なく誰かに捨てられ、そして誰かに拾われていた。

 インタビューが行われたのはそれからさらに数日後だった。指定されたのは同じ六本木のホテルだった。かつての野球界のスターは東京の真ん中、林立するビル群の中に匿われていた。

【次ページ】 「なんか捜査員みたいですね…」

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