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プロ野球PRESSBACK NUMBER
大谷翔平にも鈴木誠也にも「バッティングは負けたくない」…“ドラフト9位から這い上がった男”佐野恵太29歳が語る同世代スターへのホンネ
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/06/30 11:02
6月27日の巨人戦で3号2ランを放ち、ガッツポーズする佐野恵太。今季も試行錯誤を重ねながら、徐々に本調子を取り戻しつつある
さらに敬意を込めて言う。
「このフォームと、このスイングで、これだけの打球を飛ばせるのは本当にすごいと思いながら見ています」
大谷翔平にも鈴木誠也にも「負けたくない」もの
大谷は高校生の頃から同世代のフロントランナーだった。打っても投げても超高校級と騒がれ、王道の真ん中を歩んできた。
佐野は対照的だった。日が当たらないところから、自ら道を切り拓き、目の前に現れるチャンスをひとつずつ、掴んでいった。気づけば、眩しいところに立っていた。30歳を前にふと思う。
「高校、大学の時の自分が、30歳でプロ野球選手になっていると知ったらビックリすると思います」
だが、満足感はない。それは、こんな問いに対する答えから窺うことができる。
――同い年の大谷翔平選手やカブス鈴木誠也選手にも「ここだけは負けない」ものはありますか。
「バッティングは負けたくないとずっと思っています。僕がちょうど試合に出始めた頃、多分、誠也が最後、(広島で)日本にいた頃だったんですよね。負けたくないって思いはありますね」
試合後の横浜スタジアム。仕事を終えた売り子たちが荷を下ろし、くつろいでいるなか、バットを持ちながら薄暗いアスファルトの通路を歩いていく男がいる。そしてライトスタンドの真下にある室内練習場に消えると、ほどなくして中から乾いた打球音が聞こえてくる。両足を平行にした打席での構えを従来のクローズドスタンスに戻し、いまはバットスイングの軌道を整えている。
「年々、変わってきていると思います。1カ月後に、まったく違うことをしているかもしれませんが、今はちょっと新しいことにも挑戦しながらやっています」
佐野恵太は今日もバットを片手に打ちにいく。“遅れてきた男”にとって、理想の打撃を巡る旅に終わりはない。
<前編からつづく>