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“壮絶な死の山”EURO決勝Tの明暗「我々がベスト」スペインにドイツ、不甲斐なく不運なフランスvsベルギー、ポルトガルも…現状と展望 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byAnadolu/Getty Images,Kazuo Fukuchi/JMPA

posted2024/06/29 17:00

“壮絶な死の山”EURO決勝Tの明暗「我々がベスト」スペインにドイツ、不甲斐なく不運なフランスvsベルギー、ポルトガルも…現状と展望<Number Web> photograph by Anadolu/Getty Images,Kazuo Fukuchi/JMPA

カタールW杯でのスペインvsドイツ。この一戦はドローだったが、EURO準々決勝で雌雄を決することになるか

「この役割(スーパーサブ)を実にうまく務めることは、彼にとって幸運であり、不運でもある。もちろん、彼にも先発の可能性はある。ただし、カイ(・ハバーツ)にも同様にチャンスはある」

 スイス戦でその遅咲きの大型FWが90+2分に得点していなければ、ドイツは16強で前回王者イタリアと対戦するところだった。ただしその先を考慮すると、どちらが進み易い道のりかはわからない。本大会に入って調子を上げている開催国の代表の真価が、ここから問われる。

スペインが“ウノゼロ”モードに入っている?

 イタリアやクロアチアと同居する“死の組”に入りながら、スペインは今大会で唯一、全勝と無失点を維持している。

 クロアチアとの初戦こそ3点差で完勝したが、以降の2試合ではどちらも1-0の白星を得た。守備の美学を誇るイタリアの伝統的なスコア(ウノ・ア・ゼロ)は、攻撃的な哲学を持つスペインにはそぐわないと思えるかもしれないが、2008年から主要大会を3連覇した全盛期の彼らが何度も記録したものでもある。特に2010年W杯では、決勝トーナメントの全4試合を含む、計7戦のうち4試合が1-0の勝利だった。

 この手堅さは、成功の前触れかもしれない。

「私たちの国が生み出した選手とフットボールを讃えたい。私の見立てでは、我々(スペイン)がベストだ」

 イタリアとの2戦目の後、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督はそう話した。U-19、U-21、U-23代表の監督を務めた後、カタールW杯後にA代表を率い始めた指揮官は、それでも過信しているわけではなさそうだ。すでに首位通過を決めて臨んだアルバニアとの3戦目では、先発を10人入れ替えて勝利したものの、「まだまだ改善点はある」と語っているように。

マラドーナ、メッシと比較されるヤマルが機能すれば

 ラウンド16の相手は、グループ3戦目でポルトガルを2-0で退けたジョージアだ。クビチャ・クバラツヘリアとゲオルゲス・ミカウターゼを擁する攻撃陣は、独特のリズムでスペイン陣内に侵入しようとするはずだが、ロドリがフィルターとなる中盤と、アイメリック・ラポルトを中心とした最終ラインを攻略するのは至難の業だ。

【次ページ】 なぜフランスは不甲斐なく、不運に見えるか

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