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球体とリズムBACK NUMBER
「マンUでクリロナにディスられた監督」「万能主将アラバはケガで出場NG」なのに…オーストリア“EURO躍進のナゼ”「心から楽しんでるよ」
posted2024/06/29 17:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
ゲーゲンプレスのプロトタイプを作った智将だが
マンチェスター・ユナイテッドでパッとしないチームしかつくれなかったラルフ・ラングニック監督が、なぜこれほど見事なオーストリア代表を築けたのだろうか──。
最近、イングランドのメディアを中心に、そうした記事が出回っている。なぜならラングニック監督が率いるオーストリアは、EURO2024のグループDでフランスとオランダという優勝経験国を抑えて、首位通過を遂げたからだ。
もとより戦前から、彼らをダークホースに挙げる有識者は少なからずいた。その最大の理由と考えられていたのが、このドイツ人指揮官の存在と彼が植え付けた組織的なトランジション・フットボールにある。
直前のシーズンまでリバプールを率いたユルゲン・クロップ監督らが世に広めた“ゲーゲンプレス”のプロトタイプは、ラングニック監督が考案したものとされている。プロ選手のキャリアを持たない66歳の指導者は、今大会でドイツの指揮を執るユリアン・ナーゲルスマン監督や、2021年にチェルシーを率いてチャンピオンズリーグを制したトーマス・トゥヘル監督などにも、多大な影響を与えた戦術家だ。
だからこそ、全体的に動きの少ないイングランド代表と好対照のチームとしてオーストリアが引き合いに出され、ユナイテッドは2021年11月にチームを生まれ変わらせてくれると信じて、ラングニック監督を暫定的にでも招聘したのだろう。
ロナウドがラングニックを“ディスった”日
ところが当時のユナイテッドには、サウジアラビアに飛び立つ前のクリスティアーノ・ロナウドがいた。30代後半のスーパースターは新監督が求める守備のタスクを受け入れなかったばかりか、のちに大きな物議を醸したインタビューでこのように明かしている。