イタリア・バレー界きっての重鎮ジャンルカ・パジーニ記者は、今季の高橋を「プレーヤーとして一皮むけた」と手放しで称賛した。

「ランは今季のモンツァにとって一時たりともコートから欠かすことのできないプレーヤーだった。特に成長したのは、テクニックと堅実さを試合を通して高いレベルで発揮するという点だ。ランはチームを勝利に導く“エクイリブリオ・プレーヤー”になった。今やどんなチームであれ、エクイリブリオ・プレーヤーは絶対必要だ」

　イタリア語の「エクイリブリオ」とは、直訳すればバランスのことだが「冷静な判断」という意味合いもある。

　3年目のセリエAで、高橋は自身のプレーのみならずチーム全体の調子を整え、相手の攻勢を断ち切り、ゲームの流れを変えることができる選手、いわば“トータル・バレーボーラー”へと飛躍的成長を遂げたのだ、とベテラン記者は目を細めて称えた。

王国に刻まれたラン・タカハシの名前

　世界最高峰リーグはシーズンを終え、選手たちの移籍が活発化する。

　プレーオフ期間中、モンツァの地元ではガラッシやマール、高橋ら4人の主力が今季限りでチームを離脱することが半ば既成事実として語られていた。

　ラストダンスは苦い結末に終わった。

　彼らはそれぞれ新しい道を歩き出す。

©︎Takahisa Hirano

　じきに高橋の去就も明らかになるだろうが、爽やかに舞った彼の鮮やかなプレーぶりを王国のバレーファンが忘れることはないだろう。