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「久保(建英)くんはスペイン語も自由に使えるのが最大の強み」ガンバ大阪・岡井通訳が語る“攻撃だけではない”スペインサッカーからのヒント
posted2023/08/11 11:01
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Daisuke Nakashima
京都サンガのユニフォームをまとい、Jリーグでのプレーを夢みた少年は、紆余曲折のサッカー人生を経て「言葉」を武器にJリーグの舞台に立った。
ダニとかの意図をできる限り“ほぐしてあげる”
ポヤトス監督が「エンドレナドール・デントロ・ド・カンポ(スペイン語でピッチ上の監督)」とまで信頼を寄せる山本悠樹は、ポヤトス・チルドレンとして今、存在感を発揮しているが、その山本は岡井孝憲通訳への感謝をこう語る。
「普段から監督がどういうことをしたいのかを練習だけでなく終わってからでも細かく教えてくれています。キャンプの時から話をしていて、だからこそダニ(ポヤトス監督の愛称)のやりたいことを早めに飲み込むことが出来た」
育成年代で高いレベルでプレーしたことも通訳としての強みだ。
自分はあまり能力がなかったので頭を使うのが好きな選手でした。ビルドアップでも、相手がどちらからプレスに来ているかとか、相手のスライドがどちらに流れているのかなどを見るのが好きで、いわば頭でプレーするタイプでした。
今も考えて通訳していますし、ダニとかマルセル(ヘッドコーチ)が何を伝えたいのかをお互いにコミュニケーションして、出来る限り、意図をほぐしてあげる。そして選手に伝えられるのが自分の強みになっています。スペイン人監督と日本人選手の間に入って、言葉を直訳しても会話が成立するとは限らない。例えば『体の向き』と訳しても、聞いた選手は『体の向きって何なの』となるかもしれない。いかに受け手が言葉を理解しやすいように伝えるか、そこに面白みを感じますし、絶対に今後の指導人生にも生きてくるなと思っています」
「日本人は作戦盤でサッカーしてるよね」
練習中はポヤトス監督の影のごとく、側に寄り添い身振り手振りも含めてスペイン人指揮官の言葉を熱く、そして分かりやすく伝える。会見や囲み取材では、常にメモを片手に一言一句逃さずに日本語に変えていく。徳島ヴォルティス時代の岡井さんには、通訳だけでなくアシスタントコーチの肩書きもついていたが、ポヤトス監督からの信頼は当然、厚い。