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「右肘手術の選択肢」「復帰直前のケガ」ヤクルト・奥川恭伸が多くを語らなかった“空白の2年間”の真実「結果で見返したいと思い続けて…」
text by
横山尚杜(サンケイスポーツ)Naoto Yokoyama
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/01/27 11:03
故障を乗り越え、完全復活のマウンドを目指す奥川
私生活も心機一転した。昨季終了後に戸田寮を退寮し、一人暮らしをスタート。その一室は軽いトレーニングやストレッチができる部屋とした。楽しみでありこだわりでもあるのが自炊だ。幼少期に母・真由美さんが料理する姿をそばで見ていることが多かったといい、基本的な料理はレシピを見ずに調理できる。
「夜は最低でも白米と肉系、魚系、サラダ、汁物は食べるようにしています。メニューは全部栄養ありきで考えていて、特にたんぱく質はしっかり摂るようにしています。植物性たんぱく質も動物性たんぱく質も両方摂れるようなメニューを必ず作っています」
変わった意識…料理も自ら
肉メニューであればピーマンの肉詰めやステーキ、魚メニューは煮物やムニエルとバリエーション豊富になってきている。それ以外にも水、サプリメントなど口にする物すべてにこだわるようになったのは、マウンドから遠ざかったこの2年間で得た知識のおかげだ。
鮮烈な輝きを放った夏の甲子園大会から4年以上が経った。あどけない笑顔がトレードマークだった青年も22歳。同級生の多くは大学を経て4月から社会人になる。苦悩を刻んだ2年間で奥川の表情も大人びるようになった。
「ずっと結果で見返したいと思い続けて、密かに頑張っていますよ」
周囲からは停滞に見えたとしても、自身では確実に前に進んでいる実感がある。人前で多くを語らなくなったのは批判を恐れているからではなく、マウンドで証明することが一番だと知っているからだ。