10番人気での勝利も「驚きではなく、ほっとした」

　コスモドリームにとって、これがデビュー7戦目。初戦から熊沢さんが騎乗し、2戦目で初勝利を挙げるも、4戦目のチューリップ賞ではスタート直後に躓いて落馬し、競走中止に。その後、新人の岡潤一郎に乗り替わって2戦し、はなみずき賞で2勝目をマークする。しかし、岡がまだGI騎乗資格を満たしていなかったため、オークスで熊沢さんに手綱が戻ってきた。

「桜花賞で1、2着だったアラホウトクとシヨノロマンに実績では及ばなかったですが、若かったせいか、どう乗ったら勝てるだろう、と本気で考えていました。チューリップ賞では骨膜の影響で躓いてしまったので、特にスタートには気をつけました」

　22頭立てとなったオークスで、コスモドリームは、中団から後方に待機。直線で馬場の真ん中から力強く伸び、先頭でゴールを駆け抜けた。人馬ともに初めての重賞勝ちがGI制覇となった。

「折り合いなどに心配のない馬なので、自分の位置を確認しながら、人気馬がどこにいるか見ていました。3、4コーナーでは、手綱を放したらどれだけ伸びるのだろう、という手応えだった。直線では、坂を上り切るまで追うなと松田（博資・元調教師）先生に言われていたので、ラスト1ハロンぐらいまで我慢しました」

コスモドリームでのGI初騎乗・初制覇を振り返る熊沢重文　©Number Web

　東京の直線はやはり長く感じられたのか。

「長いという頭はあったんですけど、馬が伸びていたから、それほど長くは感じませんでした。逆に、余力がないときは長く感じますけどね。初めて調教に乗ったときから、どの馬と併せても負けることのないくらいの動きをしていたんです。この馬で勝ったことは決して驚きではなく、ほっとしたという感覚に近かったですね」

　見習騎手によるオークス制覇は戦後初の快挙だった。当人に驚きはなくても、ファンや関係者に与えたインパクトは大きく、「熊沢重文」の名は一躍全国区になった。

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