「トミはエクセレントだった。彼は最近、長い時間をプレーしている。我々は過密日程をこなしており、現時点で最終ラインの選手が不足している。 そこで私たちはこの機会を使い、いくつか変更を加えた。冨安に休息を与え、他の選手にプレー時間を与える必要があった」

「トミは更衣室でみんなに愛されている」

　今回のランス戦で、冨安は公式戦5試合連続で先発出場。アーセナルのレギュラーに返り咲いたといえるだろう。しかもこの間には、日本代表の11月シリーズにも参加した。ホームでのミャンマー戦には出場しなかったが、サウジアラビアで行われたシリア戦で先発し75分までプレーし、5−0の完封勝利に貢献した。

　シーズン序盤はそうでなかった。昨シーズンの3月に負った膝靭帯の怪我で出遅れ、ベンチ要員もしくはローテーション要員として、ピッチに立ったり、立たなかったりする試合が続いた。

　しかし冨安は、出場した試合で堅実なパフォーマンスを続けた。ある時は左SBとして、ある時は右SBとして、そして、またある時はCBとして──。「アーセナルでプレーできれば幸せ。どのポジションで出場しても、その考えは一緒」と常日頃から語っているように、冨安はアルテタ監督の要求に応えながら出番と出場時間を増やしていった。

　そして、指揮官もそんな冨安に全幅の信頼を寄せている。日本代表が今シーズン、先発メンバーに定着するようになった直前の会見（10月27日）で、アルテタ監督は次のように証言していた。

（英国人記者：冨安が明日のシェフィールド・U戦に出場すれば、アーセナルでプレミアリーグ50試合目のメモリアルゲームになります。冨安はこの夏、自信を持てずに苦しんでいたと思いますが、本人は「今、調子が良い」と話しています。彼の変化に気がついているか？）

「たしかに、トミはチャンピオンズリーグのセビージャ戦でも素晴らしかった。途中出場したチェルシー戦も本当に良かった。何より大事なのは、トミが更衣室でみんなに愛されていること。例えばトミに何かをするように伝えれば、彼はそのために命を捧げるでしょう。トミは並外れたプロフェッショナルで、他の選手にはない”ユーティリティ”と”確かなクオリティ”を備えている。私にとって彼は本当に重要な選手なんだ」

アーセナル公式のインタビューで「仲が良いチームメイトは？」と聞かれ、「ウィリアム・サリバかな」と応えた　©Getty Images

（英国人記者：最終ラインのどこでもプレーできる選手がいるのは、ミケルにとってどれほど有益なことか？）

「我々の最終ラインには6～7人の選手がいるが、数が揃っているだけでは十分でない。さまざまなポジションをこなせるポリバレントな選手が必要なんだ。ピッチに立って、どの位置でも快適にプレーできる選手は貴重なんだ。実はこれは非常に難しいことである。もちろん、ポジションが変われば、周囲との連携プレーにズレが生じる。要求されるタスク、仕事量も変わり、難易度が非常に上がる。でもトミはとても自然に、そしてスムーズに適応してくれる。だから、トミがアーセナルにいてくれて本当に助かるんだ」

現地記者が驚いた“異例の起用法”

　筆者は、冨安の底しれぬポテンシャル、潜在能力に大きく驚いたことがあった。

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