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「トミは更衣室で愛されているんだ」アーセナル冨安健洋25歳、“日本人が知らない”現地評価…4カ月間で“激変”、アルテタ監督も絶賛「本当に助かる」
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byAFLO
posted2023/12/04 17:27
10月28日のシェフィールド・U戦。アーセナルでの初ゴールを決めた冨安健洋(25歳)を祝福するチームメイト
記者会見の翌日に行われた、シェフィールド・U戦。この試合でベンチスタートだった冨安は、タッチライン際で体を温めていた。
念入りに体をほぐしながら、チームの戦況を見つめる冨安。今日は自分はどこでプレーするのだろう──。そんなことを考えながら、仲間たちの戦いを見つめていた。
アーセナルでは、同じサイドバックでも、「左サイド」と「右サイド」で役割とタスクが大きく違う。
例えば左SBは、チームのボール保持時にボランチの位置、つまりピッチ中央までポジションを移してプレーする。サイドバックとして守備はもちろん、ボールキープ時はMFのタスクも要求される。
一方の右SBは、CBのような役割が求められる。チームのボール保持時、左SBが中盤中央のボランチの位置に移動する。その空いたスペースを埋めようと、右SBの選手は中央部にポジションをスライドさせ、さながらCBのようにプレーするのだ。
左右両サイドのサイドバックとして出場している冨安は、こうした異なる2つのタスクをスムーズにこなしているのだ。
筆者が驚いたのは、試合後の冨安のコメントだった。
記者陣から「これまで左SBとして途中出場が多かったが、今日は右SBとして出場した。右サイドの方がやりやすさはあるのか?」と質問が飛ぶと、冨安は「そんなことはないです」と回答。次のように言葉をつなげた。
「センターバックでも、右より左の方がやりやすい。日本代表でもこうした理由から左でやってます。 僕的には左の方が(いい)って感じではあります。
今日のアーセナルでの試合で、アップをしながら『試合展開的に右SBでの出場もあるな』っていう風に考えていたので。 実際に出場したのも右SBだったって感じですね」
アルテタ監督は、途中交代で投入する直前まで、冨安に左右のどちらのサイドバックで起用するのかは伝えないという。そのため冨安は、アップをしながら右SBの出場の可能性も想定していた。
アップ中にイメージを膨らませながら、出番をひたすら待つ。そして、投入直前に指揮官からポジションを伝えられる。もちろん予想に反し、左SBで出場する可能性もあるわけだ。
右SBと左SBでは、見える景色も役割も異なる。それなのに、投入直前のタイミングで頭の中を見事に切り替え、的確に仕事をこなす。「冨安の頭の中は一体どうなっているのだろう」と、本人の言葉を聞いてひどく感心し、サッカーIQが極めて高い選手であると、改めて感じた。
そしてこのシェフィールド・U戦で、冨安はアーセナルで初ゴールをマークした。加入から3シーズン目で掴んだ初得点。「やっと決められて良かったと思います」と本人も喜んでいた。
緊急交代…左ふくらはぎの違和感
想像してみてほしい。冨安が身を置いているのは、世界最高峰のプレミアリーグである。試合展開の速さも、敵の寄せの激しさも、世界トップレベルにある。