ポジションも仕事も、固定されているわけではない。途中出場の場合、託される役割を知るのは投入の直前である。それでも25歳のサムライは、見事に仕事をこなしてきた。

「要求されるタスク、仕事量も変わるため、非常に難しい。でもトミはとても自然に、そしてスムーズに適応する。だから、トミがアーセナルにいてくれて本当に助かるんだ」

　こうした背景を踏まえると、先述したアルテタ監督の言葉にも深みが出てくる。

　それだけに、2日に行われたプレミアリーグのウォルバーハンプトン戦で、冨安が左ふくらはぎの違和感で交代したのが残念でならない。試合後の会見で、アルテタ監督は「怪我が再発したのか、分からない。違和感があったみたいだが、分からない。疲労からかもしれないが、リスクを負いたくないから交代させた。今後、検査する」と説明した。

12月2日のウルブス戦。左ふくらはぎの違和感で座り込んだ冨安　©AFLO

自ら歩いてピッチを後にした。観客からは冨安に大きな声援がかけられた　©AFLO

　交代後の冨安は選手通路口まで自分の足で歩いて戻った。そのため重症ではないように見えたが、違和感での交代は12月の過密日程に向けて不安を残すことになった。なにより、ウルブス戦で2試合連続のアシストを記録していただけに、本人が一番悔しがっていることだろう。

　それでも、冨安がレギュラーを再奪取した事実は変わらない。日本代表DFの対人守備を含めた個人能力はもちろん大きい。だが、サッカーIQの高さや万能性、適応力も、監督の信頼を鷲掴みにしている理由であると、そう思うのだ。