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ドラフトウラ話…ロッテ&阪神“2位指名”が持つ意味は?「プロ側の『信頼』と『興味』が社会人から独立Lに」…ドラフト全指名を検証する《ロッテ・阪神・オリ編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2023/11/09 11:03
阪神2位指名の椎葉剛投手(IL徳島・183cm92kg・右投右打)
こんな年に、話題の焦点になっているチームに入るルーキーたちは幸せだ。おそらく、来春の沖縄キャンプは、報道陣が殺到するだろう。注目は、まず一軍選手たち。そして、その次がルーキーたちだ。一軍キャンプに抜擢された大学、社会人、独立リーグ出身組は、連日の取材に追われるだろう。
該当するほとんどの選手が「投手」。カメラの放列がズラリと並ぶ華やかなブルペン風景になるはずだ。
ウェーバー順で、2位指名がトータル23人目になるから、重複→抽選を回避して1位・下村海翔投手(青山学院大)を指名した阪神。目論見通りの単独指名だった。
軽くヒョイっと投げているように見えて、コンスタントに140キロ台後半。スライダー、カットボールにスプリット。速い系の緩急で両サイドをきっちり突きながらアップテンポな投球を展開して、最初から飛ばした時の試合前半の投球は文句なし。
ピンチにも向かっていけるファイティング・スピリットも旺盛だが、燃え過ぎて制球を乱すこともない。先発を目指すなら、持久力アップを図りながら、力の配分を覚えることか。
会場もどよめいた独立リーグ選手の「連続2位指名」
支配下ドラフトの2巡目で、独立リーグの投手が2人続けて指名されて驚いたのは、私だけじゃないようで、久しぶりに会場を埋めたファンも、ゾワゾワっとどよめいたものだ。
今回のドラフトで、大量4投手が指名されたIL徳島のエース格が、2位・椎葉剛投手。9月末の独立リーグNo.1準々決勝戦で、アッと驚く「159キロ」をマークしてほとんどのプロ球団から調査書が殺到したという。
確かに今年は、リーグ戦でも、コンスタントに140キロ台後半を投げていた。もともと、パワーピッチャーの資質はあったが、力を入れて投げているわりにそこまでボールは来ないし、力むから制球も不安定。それが今季は、サラッと投げて、ギューンと速球がうなった。リリースで、下半身の体重移動と腕の振りのタイミングが合うようになって、楽に剛球を投げ始めた。
育成で指名の1位・松原快投手(日本海L・富山)も、打者を圧倒できる150キロ台後半の速球とシンカーで、今年の日本海リーグで0点台の防御率。NPBのファームとの試合でも、5試合のリリーフで9イニング無失点。実戦力が上がった。
千葉ロッテ2位指名の大谷輝龍は、共に腕を磨いたチームメイト。椎葉も含めた3投手とも、一度は社会人野球を「戦力外通告」になった身の上。そこから気持ちを立て直してドラフト指名を勝ち取ったのだから、相当にタフな心身の持ち主なのだろう。
阪神には、湯浅京己、石井大智……絶好の成功例がある。
5位・石黒佑弥投手(JR西日本)は、昨年も「ドラフト候補の駅員さん」として注目されたが指名がなく、やはり、そこからの立ち直りが見事だった。
今夏の都市対抗、余計なものをどこかに捨ててきたようなハツラツとしたマウンドさばきで、怖いものなしのように見えた猛烈な腕の振り。ふっきれた……とは、こういうことなのだろう。
常時140キロ台後半の速球とカットボール、スプリット。敏捷なけん制動作にクイックも鮮やか。今の「捨て身」を忘れなければ、十分使える。