マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
《ドラフト指名漏れ=プロ失格》ではない! スカウト「いま指名されなくてよかったね」の理由は?…ある“指名漏れ選手”からの一本の電話
posted2023/10/31 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
「東都7人衆」と称された快腕・剛腕たちをはじめ、「2023ドラフト」の大学生投手の人材は、ひょっとすると60年近いドラフト会議の歴史の中でトップ3に入る充実ぶりですよ――と春先、いや、今年のお正月頃から語り続けてきた。
終わって見ればその通り、2023ドラフトの1位指名12選手のうち、8人を「大学生投手」が占め、2位指名までの24選手でも、半数の12人の指名が大学生投手だったから、「やっぱりねぇ」と納得しながらも、やっぱり驚いた。
しかも、よくよく考えてみると、もっと「あっ!」と驚くことがあった。
1位指名の大学生投手たちの中に、「甲子園のスター」が、一人もいないのだ。
ほとんどが、無名校のエース格か、強豪校の2番手、3番手。
わずかに、ヤクルト1位の西舘昂汰(筑陽学園高→専修大)と巨人1位・西舘勇陽(花巻東高→中央大)だけが「甲子園」で登板しているが、雄々しく勝ち進むこともなく、西舘勇陽は3回出場でも失点の記憶しかない。西舘昂汰もセンバツ2試合はリリーフ登板。夏は作新学院戦に完投したが、5失点の初戦敗退に終わっている。
そして、3球団の1位指名が重複した武内夏暉(西武1位、八幡南高→国学院大)や2球団重複の常廣羽也斗(広島1位、大分舞鶴高→青山学院大)、楽天1位の古謝樹(湘南学院高→桐蔭横浜大)に至っては、高校時代の存在どころか、その名も知らなかったというお粗末。
たいへん失礼いたしました……と、シャッポを脱ぐしかない。
「ドラ1」大学生8人で高校時代にプロ志望者は“ゼロ”
大学4年の秋に、こんなに獲り合いになるぐらいだから、高校3年の今ごろだって「候補」になっていたんだろう……と思うと、今回の1位指名の大学生8投手の中で、高校時にプロ志望届を出した投手は1人もいない。そしてスカウトが食指を動かした投手も、福岡県下屈指と評されていた筑陽学園高・西舘昂汰ただ一人だったのだから、あらためて驚く。
「今回の1位指名の<8人>にしても、僕は西舘と細野(晴希・東洋大→日本ハム1位)の2人を(高校時に)ちょっと見たくらいですけど、おそらくあの時に志望届を出していても、誰も指名されてないと思うしプロに入っていても、今年で4年目……今ごろは誰も残ってなかったかもしれないですね」
ご自身もプロの荒波の中で何年もご苦労されただけに、そのスカウトの方の「見立て」もありのままにきびしいものだった。