絶大な自信を持って、我々は第3戦に臨んだ。選手たちに緊張はなかった。打撃練習はとてもリラックスしていた。マスコミは普段とは違い、敵対してくる感じはなかった。突然、我々に疑問を感じなくなったのだ。彼らもロッテには可能性があると言い始めていた。

マサはいつもこうやって場を盛り上げる

　第3戦は、サブマリンの渡辺俊介を先発させた。必要なときは容赦なく攻める選手で、周囲から愛される存在だった。我々は3回に2点、8回にも2点を取り、4−0とリードした。俊介は波に乗っていた。これに勝てば、日本シリーズに進出する。

第3戦に先発した渡辺俊介　©Hideki Sugiyama

　このシリーズが始まる前、私はエースリリーバーのマサに「このシリーズ最後のアウトを取る瞬間に、君がマウンドにいるという場面がやってくるのが待ちきれないよ」と伝えてあった。

　そして9回がやってきた。マサは、その状況を迎える機会を得たのだ。先頭のカブレラがヒットで出塁したが、心配はしなかった。マサはいつもこうやって場を盛り上げる。次の打者はセカンドフライに倒れ、私がふとダッグアウトに目をやると、ベンチは人であふれかえっていた。投手全員にコーチも全員、裏方も全員ダッグアウトに入り、グラウンドに飛び出して祝福する用意ができていた。

次に起きたことは、ハリウッド映画そのものだった

　次のバッターはどん詰まりの弱いゴロを三塁線に打った。マサはマウンドを駆け下りて素手でつかみ、バランスを崩しながら一塁へ投げると、ボールは大きく逸れてライト線へ転がった。ワンアウト1、3塁。客席はうなり声を上げており、内野手がマサを落ち着かせようとマウンドに集まった。ダッグアウトにいるメンバーは、まだ自信を持っていた。4点リードしているのだから。

　次の打者がヒットを放ち、スコアは4−1となってなおもランナーは一、二塁。次は厄介な一番バッター、川﨑だった。彼が打席に入るたびに良くないことが起きていたが、ここは輪をかけて良くない状況になった。川﨑は高いバウンドのゴロを三遊間に放ち、今江がジャンプして捕ろうとしたが届かず、その勢いで三塁に向かっていたランナーの身体にかすってしまった。審判員はそのプレーに指を差し、ランナーは三塁でストップして満塁となった。 

　次に起きたことは、ハリウッド映画そのものだった。

＜続く＞

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