川﨑と松中がホークスの魂

　第2戦で、私はエースの清水を先発させた。試合前のミーティングで、我々が主眼を置いたのは川﨑に出塁させないことと松中を打ち取ることだった。彼ら2人が、ホークスの魂だったからだ。

　ソフトバンクの先発は、シーズン中我々が打ちあぐんだ右の剛腕投手、斉藤和巳だった。清水は5回に1点を失ったが、6回表、若い遊撃手の西岡が先頭で一塁線を破る二塁打を放った。続く堀は四球を選んだ。

この年、16勝1敗という成績だった斉藤和巳　©Hideki Sugiyama

　私は次の福浦にバントを命じなかったものの、レフトフライに倒れた。だがサフローが四球で満塁となった。ここで打席に入ったのはマット・フランコだった。この日は指名打者だったマティは、2ストライクと追い込まれながらも、フォークボールを捉えて右中間に運び、二者を還す二塁打とした。

福岡の神々が我々を封じ込めようとしているのか

　我々はさらに高いバウンドの内野ゴロの間に追加点を挙げ、6回表を終えて3−1のリードを奪っていた。清水はまだ力強い球を投げていたが、6回裏、先頭の厄介な川﨑に右中間スタンド最前列にホームランを浴びた。簡単に打てるホームランではなかった。グラウンド全体を囲む非常に高いフェンスの上にある最前列席までは、地面から9mの高さがあった。あの小柄な選手がホームランを打ったということは、福岡の神々が降りてきて、我々を封じ込めようとしているのかと考え始めていた。スコアは3−2となり、そのまま9回を迎えた。

　私はここでも小林雅英を送り込んだ。ツーアウトとなって打席に入ったのは、またもやスラッガーの松中だった。3−2のフルカウントから、マサは145キロのシュートを投げ、松中は左中間へ高々と打ち上げた。私たちが息を呑んで見守る中、打球が落ちてきて中堅手のグラブに収まった。我々は3−2で勝利し、2勝0敗とした。

マスコミは普段とは違い、敵対してくる感じはなかった

　第3戦が始まる直前、我々のファン全員が「I BELIEVE」と書かれた縦30cm横1mぐらいのサインを掲げて客席で立ち上がった。マリーンズファンに割り当てられたセクションが、無数のサインで埋め尽くされていた。このとき、我々のファンは心から信じていたのだ。それが、私たちの心に染みこんできた。我々は本当に信じていた。ファンは、私が選手にこう言ったのを聞いていた。

「自分を信じて、チームメートを信じろ。自分の思い通りの結果になると信じるんだ。やるべきことへの準備をし、それに向かって全力で努力をしろ。そして、信じろ！」

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