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ソフトバンク“逆王手”でプレーオフ窮地、ロッテ・バレンタイン監督が試合後の選手に伝えた「ドウモ、ドウモ、ドウモ」「我々は世界で最もラッキーな人間」
posted2023/10/15 11:02
text by
ボビー・バレンタイン&ピーター・ゴレンボック"Bobby" Valentine&Peter Golenbock
photograph by
Hideki Sugiyama
前回に引き続き、2勝して王手をかけたソフトバンクホークスとのプレーオフ第2ステージの第3戦、4−1でリードしながら9回裏一死満塁。ランナーが三塁でストップした場面から、『ボビー・バレンタイン自伝』(和訳版は2023年3月刊)の内容を抜粋してお届けする――。(全3回の第3回、前回は#2へ)
判定が2度覆る
ソフトバンクのダッグアウトから、日本の野球界で最大のリスペクトを受ける王監督がゆっくりと歩いてきて、審判の方に向かった。三塁ベースコーチとランナーは叫ぶのをやめると、審判員が王監督の姿に気づき、彼と話すために近づいていった。王監督との数分の会話の後、他の審判員たちと協議して、ランナーの生還が許された。そのとき、会場は爆弾が落ちたかのように歓喜の叫びが一気に湧き上がった。
今度は私が出て行く番だった。王監督がやったように、私もゆっくりと審判員に向かって歩いた。私は審判団全員を集め、審判員がプレーに対して指差したのを見た、すなわちオブストラクション(編集部注:走塁妨害)が起きたことを宣言していたと、通訳を介して説明した。そして、私はルールブックに書いてあることを伝えた――審判員がそのようなプレーを認めたときは、プレーは続行されなければならない。プレーが完了した後、審判員はオブストラクションが走者の進塁をどの程度妨害していたかを判断し、次の塁への進塁を認めるかどうかを決める。
「ランナーは、うちのサードが身体に触れた後、ホームに向かわずに三塁でストップした。ホームベースに向かって走り続けていなかった。であれば、生還を許すべきではない」と私は主張した。
日本の慣習にならい、球審がバックネット下のマイクのところに行き、場内に協議の内容を説明した。アメリカでは、審判団が何を協議したのかファンには皆目見当が付かなかったので、ここは大きな違いだった。球審の説明は、当初はランナーに生還が許されたが、ルールを再検討した結果ランナーは三塁に戻らなければならないということだった。
マサはウォームアップしていたのか?
王監督は、ダッグアウトで座ったまま、納得したように首を縦に振っていた。ファンはこの判定に不満を爆発させ、50人ほどが外野に物を投げ入れてきた。清掃クルーが出てきて投げ入れられたものを拾うのにさらに5分待たなければならなかった。その間、マサはずっとマウンドに立っていた。