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「少なくとも5人の候補者に断られ…」イチローでも松井秀喜でも工藤公康でもなく…“WBCポスト栗山”侍ジャパン監督問題が迷走するワケ 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2023/09/24 17:00

「少なくとも5人の候補者に断られ…」イチローでも松井秀喜でも工藤公康でもなく…“WBCポスト栗山”侍ジャパン監督問題が迷走するワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

第5回WBCで日本代表を率いて世界一に導いた栗山英樹監督。6月に退任会見を行なった

 本人の事情もあるために実名を出すことは避けるが、筆者が確認をとれているだけでも、NPBの侍ジャパン強化委員会(井原敦委員長)は、非公式も含めて少なくとも5人の候補者に就任を打診して断られている。

 同じようなことは2009年の第2回大会の監督選任のときにもあったにはあった。そのときは2008年北京五輪で代表チームを指揮した星野仙一さんが、そのまま翌年のWBCでも代表監督を務めることが既定路線だった。しかし北京五輪で敗れた星野さんが激しいバッシングの中にあった上に、「WBCで(北京五輪の)リベンジを」という発言に、当時シアトル・マリナーズでプレーしていたイチロー外野手が「WBCはリベンジの場ではない」と異議を唱えたことから、世論が沸騰。結果として星野さんが就任を辞退することになったのが混迷の理由だった。

「代表監督はたらい回しされるべきものではない」

 第1回大会で優勝して連覇への期待も大きいというのも今回と同じで、北京ではメダルを逃していたのでハードルはかなり高くなっていた。

 そこでメディアが次々と“候補”を挙げたのだ。マスコミ辞令では当時の中日監督だった落合博満さんや元ヤクルト監督の若松勉さん、西武の監督としてその年の日本シリーズを制した渡辺久信さんらの名前が次々と挙がった。しかしそうした人々が「要請されても引き受けない、もっと適任がいるはずだ」とこれまたメディアを通じて“辞退表明”していったという経緯だった。

 ただ、そのときは報道先行で実際にNPBが、そうした“候補”と就任交渉をしたわけではなかった。そしてNPBが最初の候補に白羽の矢を立てたときには、綿密な情報収集と根回しを行なっていた。その上で巨人・原辰徳監督に就任を要請し、原監督も「代表監督はたらい回しにされるべきものではない」という言葉と共に就任を受諾している。

 そこが今回と違うところなのだ。

 今回は水面下とはいえNPBの侍ジャパン強化委員会が次々と就任の打診を行いながら、次々と断られている。中には少し情報収集をすれば、絶対に受けないことが分かるような人物にも、ほとんど根回しもなく要請をして案の定、断られた。当然、候補となるような人物の間では情報交換もあるし、「みんなが断っている」という事実が球界を駆け巡ってしまっている。

ひとまず新監督の選任をストップする選択肢も…

 もはや負の連鎖が止まらないのである。

【次ページ】 ひとまず新監督の選任をストップする選択肢も…

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