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「少なくとも5人の候補者に断られ…」イチローでも松井秀喜でも工藤公康でもなく…“WBCポスト栗山”侍ジャパン監督問題が迷走するワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/24 17:00
第5回WBCで日本代表を率いて世界一に導いた栗山英樹監督。6月に退任会見を行なった
連覇のかかる第6回WBCの開催は2026年3月。新監督は就任から2年半近くの長い任期があり、その間の仕事はチーム編成をして、強化試合を戦うだけではない。侍ジャパンの様々なイベントやスポンサー関係との会合への出席などの“仕事”もそつなくこなさなければならない。その任期の長さ、拘束期間の長さも一つのネックとなっている。
栗山前監督が就任したのは、新型コロナウイルスの世界的な流行で第5回大会が2年延長となり、前任の稲葉篤紀監督の任期が切れた2021年の12月だった。拘束期間も約1年4カ月という短期だったのに比べて、次の監督はほぼ2年半ある。その間は新たに他の役職、例えばNPBの球団の監督などに就くことは実質的には不可能となる。
そして何より第5回大会での世界一というこれ以上ない結果を前提に、連覇に挑まなければならないハードルの高さがある。
第5回大会では準決勝進出が最低ノルマで、そこを突破して決勝進出が1つの目標とされていた。しかし次回大会では決勝進出が最低ノルマとされるだろう。
ところがチームの編成面が全く不透明だ。
大谷、ダルビッシュの参加は可能なのか?
第6回大会には現ニューヨーク・メッツの千賀滉大投手や第5回大会はケガで欠場したシカゴ・カブスの鈴木誠也外野手など、新たなメジャーリーガーの参戦の可能性はもちろんある。しかしその一方で第5回大会の優勝の原動力となった大谷翔平投手はトミー・ジョン手術を受けて、復帰後にどのような状態で参加できるかも分からない。そもそも参加が可能かどうかも不確定だ。チームの精神的支柱だったサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手も3年後の大会時には39歳となる。年齢的にも現役を続けているかも見えない状況である。
そういう編成面での難しさも代表監督が負わなければならない。その現状に、名誉以上に引き受ける難しさを感じるのは当たり前と言えば当たり前の話なのである。
少なくとも5人の候補者に打診して断わられ…
加えてもう一つ、いま現在の監督選任が難航している一番の問題は、今回の交渉の過程で多くの“監督候補”たちが就任要請を断わっているという事実、そしてそのことが球界関係者の間に広く伝わっているということだ。