それでも帰郷してからはチームとしてそこまで大きなダメージを感じなかったという。一方で、森澤個人の頭の中には、少々嫌な予感が巡っていた。

「センバツから帰ってからの練習試合も大量得点する試合は多かったです。打つ方に関してはどうって言うのはなかったんですけれど、大味な試合ばかりで内容は全くダメでした。それでもビッグイニングが多かったので、春の大阪大会も、打てば何とかなるだろうという感じで入っていきました」

　春の府大会は序盤戦こそ快勝して勝ち上がったものの、転機は4回戦の大商大高戦だった。

春は「大味な試合が多かった」という履正社。府大会はノーシードからの優勝だった　©︎Nanae Suzuki

ミス連発…夏の府大会のシード権も失う

　相手エースは140キロ台中盤の速球を誇る板倉大輔。緩いカーブなども交えて三振を9個も奪われたうえに、目についたのはミスの多さだった。初回に福田の立ち上がりを攻められ、連続四球から送球ミスなどでノーヒットながら3失策が絡み、2回までに4点を奪われたのだ。中盤以降は履正社が押し気味だったが、序盤の４失点が大きく響き、3－4で敗戦。夏のシード権も失うことになった。

「大商大高の試合は完全に焦りました。4点も取られるとは思っていなかったので、すぐ点を取らなくてはいけないと序盤から浮き足立ってしまいました」（森澤）

　敗戦後、チーム内でミーティングを重ねていくうちに、副主将でもある坂根が、もっと、外に出て試合をした方がいいのでは、と口にした。

　この言葉の意味を森澤はこう明かす。

「自分たちは普段、練習試合も公式戦も履正社のグラウンドで試合をすることが多いので、自分たちのグラウンド以外の球場で試合をした方がいいと思ったんです」

　大阪大会では夏を除いた公式戦は、4回戦まで各校のグラウンドで試合を行うことが多い。履正社も自校のグラウンドで序盤戦をすることが多く、大商大高戦は大阪シティ信金スタジアムで行われた。大阪シティ信金スタジアムはこれまで何度もプレーした球場とはいえ、微妙な感覚のズレもゼロではなかった。

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