最後まで爽やかだった履正社の夏…「府大会ノーシード」「12連敗の大阪桐蔭戦」「キャプテンの苦悩」“高くはなかった前評判”から目指した甲子園→日本一の未来図

　涙はなく颯爽と。

　夏の甲子園の3回戦で、優勝候補筆頭と目されていた仙台育英と終盤まで競り合いながら3－4で敗れた後の履正社ナインの表情は、実に清々しかった。

「速いボールの練習はしてきました。こういう投手を打ってこそ4番だと思っていましたが、予想以上にストレートに力がありました。でも力は出し切りました」

甲子園で2試合連続本塁打を放った履正社の主砲・森田大翔　©︎Nanae Suzuki

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　2戦連続アーチをかけていた高校通算34本塁打を放っている4番の森田大翔は、共に150キロを超える豪球を誇る先発の湯田統真、2番手で上がったエースの高橋煌稀の印象について、さっぱりとした表情でこう振り返った。

　2番手でマウンドに上がり、決勝打となるスクイズを決められた最速150キロ左腕の福田幸之介こそ号泣していたが、取材対応をした選手らは、悔しさを噛みしめながらも、敗戦を正面からしっかりと受け止めているようにも見えた。

　もちろん、昨夏覇者と互角に渡り合ったことに満足していた訳ではない。

府大会の前評判は「高くなかった」履正社

　今夏の大阪大会を展望するにあたり、やはり大阪桐蔭の名前は一番手に挙がっていたが、その次に出てくるのは例年だと履正社。だが、今夏は春の大阪を制した金光大阪、投手陣が豊富な近大付なども有力視する声も多かった。

　履正社は、春以降、どうなっているのか――。

　そういった心配の目があったのも事実だった。

　エースの増田壮、1番を打った西稜太、主将の森澤拓海、正捕手の坂根葉矢斗らを含め、今年の履正社は1年秋から主力で公式戦に出場している選手が多く、経験値から見ても大阪桐蔭に引けを取らなかった。昨秋の近畿大会ではベスト8。今春センバツでも期待値は低くはなかった。だが、初戦で高知に2－3で敗れた頃から、徐々に歯車がかみ合わなくなってしまう。

履正社の主将を務めたショートの森澤拓海　©︎Nanae Suzuki

　主将の森澤は言う。

「高知との試合は相手の投手のコントロールもすごく良くて、自分たちは対応できないまま終わりました。ヒットは出るのにあと１本が出なかったです」

　高知の安打は2本に対し、履正社は8本。ただ、履正社の残塁は11を数えた。

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