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浦和レッズサポが燃えた“本気の埼スタ”のアツすぎる情景…ACL決勝でカメラマンが抱いた確信「その瞬間、西川周作は必ずこちらを向く」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/05/09 17:40
5月6日のACL決勝セカンドレグでアル・ヒラルを破り、3度目のアジア制覇を成し遂げた浦和レッズ。5万3374人の大声援が選手たちを強力にサポートした
その雰囲気は、駅からスタジアムまで歩く道中にある様々な掲示により、急速に熟成されていった。とりわけ効果抜群だったのは、2度のアジア制覇だけでなく、アル・ヒラルに敗れた2019年の悔しさを思い出させるための掲示が含まれていたことだ。高揚感と同時にリバウンドメンタリティをも植え付けられた観衆は、スタジアムに到着する頃にはすっかり「出来上がっている状態」に。まだキックオフまで2時間以上あるというのに、ビッグイベント特有の緩やかな空気は消失していた。
真っ赤な軍団が作り上げた「最高の雰囲気」
16時から行われることになっていたメディアブリーフィングに合わせてスタジアムに入るつもりだったが、辿り着けなかった。関係者受付までのルートを、真っ赤な軍団が埋め尽くしていたからだ。
異様な光景を目の当たりにして、「説明の中身は後で誰かに聞けばいいか」と通行を早々に諦めた。しばらく遠巻きに眺めていると、ワッと大声援が起こり、チャントと共に大量の旗が振られた。その奥に辛うじて見えたのは、黒い選手バスだ。
前回の決勝では日が落ちてからのバス到着で、その暗さが熱気を増幅させていた。だが、今回は明るいからこそ、ストレートに雰囲気の凄まじさが伝わってきた。
スタジアムに入ると、ウォーミングアップ前からゴール裏は満席で、やはり大量の旗が風になびいていた。
AFCは決勝を盛り上げるために国際試合用の演出を用意していたが、サポーターは余計な雰囲気を作らせまいと大ブーイングで反応。ハーフタイムにも近年の国際試合で流される定番曲、Coldplayの『A Sky Full of Stars』に合わせてスマートフォンのライトを点ける演出が行われたが、両ゴール裏は明るくならず。メインスタンドやバックスタンド上段で最初は点いていた光も、徐々に消えていった。
面白いのは、それによってますますサポーターの結束力が強まっていく、という構図になっていたことだ。
AFCによる演出は、2019年にも行われていた。スタジアムまでの道中で当時の悔しさを思い出すことでサポーターの空気が熟成されたように、ここでもリバウンドメンタリティによってスイッチが入ったのだ。ブーイングを受けることになったパフォーマンスチームにとっては気の毒ではあるが、「最高の雰囲気を作り上げる」という目的は達成され、いわば“必要悪”のように機能していた。こんな不思議な相乗効果は見たことがない。