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浦和レッズサポが燃えた“本気の埼スタ”のアツすぎる情景…ACL決勝でカメラマンが抱いた確信「その瞬間、西川周作は必ずこちらを向く」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/05/09 17:40
5月6日のACL決勝セカンドレグでアル・ヒラルを破り、3度目のアジア制覇を成し遂げた浦和レッズ。5万3374人の大声援が選手たちを強力にサポートした
“本気の埼スタ”を知らない選手たちにも伝播した熱
日本で浦和レッズにしか生み出せないであろう“圧倒的なホームの空気”が充満するスタジアムは、当然ながら選手たちにとっても特別な空間だ。
試合前とハーフタイムで2種類用意されたコレオグラフィー、両ゴール裏から同時に響き続けるチャント……挙げればキリがないほど凄まじいスタジアム体験は、客観的な分析とその言語化に長ける35歳のベテラン岩尾憲をもってしても「経験したことがない景色。昂る自分の感情が一気に降りかかってきた」というほどのものだった。
ホームとはいえ、そんな中でプレーすれば雰囲気に呑まれる選手がいてもおかしくはない。しかし誰ひとりとして、そうはならなかった。サポーターが2度のアジア制覇の喜びと同じ大きさで2019年の悔しさを原動力にしていたように、選手たちも悔しさを原動力にしていたからだ。
実際にプレーでそれを示してみせた選手のひとりが、関根貴大だった。2019年に決勝進出の立役者となった彼は、準優勝に終わった試合後、失望感にまみれてうなだれていた。「やっぱり、19年の悔しい思いが強かった」と語る背番号14は、前半からハードコンタクトを厭わない気迫あふれるプレーを見せながらも、「飛び込んだら負けだと思っていた」と冷静に対処すべき守備の場面では粘り強く耐えてみせた。
2019年の時点で当事者ではなかったサポーターにもしっかりとリバウンドメンタリティが植え付けられていたように、大一番での“本気の埼スタ”のピッチに立ったことがない選手たちにも、その熱は伝播していた。
アル・ヒラルの猛攻を凌ぎながら迎えた終盤、2022年にデビューした23歳、安居海渡のプレーがスタジアムの熱気をさらに引き上げた。耐え続けて訪れた久々の攻撃機会で、背番号25は迷うことなくシュートを選択。枠を外れたものの、このプレーをきっかけにスタジアムはこの日最大の声量で「We are Reds!」の大合唱をはじめた。気づけば、バックスタンドもゴール裏のように立ち上がっていた。