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宮代大聖と山田新、川崎Fの未来を担う22歳はなぜ“同じ理想”をイメージするのか? ジュニーニョ、小林悠から続くストライカーの系譜
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKAWASAKI FRONTALE
posted2023/04/28 11:03
川崎フロンターレでFWのポジションを争う宮代大聖と山田新。ともに22歳、アカデミー時代から切磋琢磨してきた2人が思い描く“理想のFW像”とは
小林悠がジュニーニョから受け継いだ信念
この話を宮代から聞いた瞬間、なんとも不思議な感覚に襲われた。
というのも、宮代にそう言わしめた小林悠その人が、10年ほど前に同じフレーズを口にしていたからである。
「チームが苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ」
2011年限りで退団することになった「川崎の太陽」ジュニーニョから、当時大卒2年目だった小林が託された言葉だ。小林がことあるごとに「チームを勝たせるストライカーになりたい」と口にしていたのも、ジュニーニョのこの教えが影響していた。彼は後にその言葉を実現し、クラブに念願のタイトルをもたらした。
宮代自身は、この信念を小林から言葉で伝えられたわけではない。
しかし苦しいときにチームを救うゴールを決め続けた小林の背中を見て、いつしか自分もそこにこだわるようになった。フロンターレのストライカー魂は、こうして受け継がれていくものなのかもしれない。
山田新の「憧れの選手」も小林悠だった
奇しくも、FWのポジションを争う同い年の山田新も、宮代と同じ考えを口にしていた。
それは山田がプロ初ゴールを決めた第2節の鹿島戦後のことだった。貴重な同点弾で劇的な逆転勝利に貢献したことを喜ぶ一方で、彼は「自分のゴールを決勝点にして勝ちたかった思いもありますが」とはにかんでいた。
「あの場面で、決勝点も自分で取れるようになりたい。チームを勝たせるゴールを決める選手になりたいんです」
山田は「憧れの選手」に小林悠の名前を挙げている。
類まれな勝負強さはもちろんのこと、点取り屋に欠かせない「相手を外す動き」の精度が極めて高いことも大きな理由だった。あの外し方を体得すれば、もっと点を取れるようになる――そう確信する山田は、日々の練習から小林の動きを観察し、どのタイミングで相手を外しているのかを研究している最中だという。
小林本人に山田が「憧れの選手」に挙げていることを伝えたところ、「そうなんですか? 全然そんな感じはない」と笑っていた。ただ相手を外す動きの勘どころと、その回数を増やすことについてのアドバイスは送ったという。加えて、パワーとスピードに優れた山田が参考にするべき選手として、日本代表・上田綺世の名前を挙げ「彼を目指せ」と伝えたそうだ。