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宮代大聖と山田新、川崎Fの未来を担う22歳はなぜ“同じ理想”をイメージするのか? ジュニーニョ、小林悠から続くストライカーの系譜
posted2023/04/28 11:03
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
KAWASAKI FRONTALE
宮代大聖には、常にイメージしている“理想のFW像”がある。
「自分が点を取っても、負けたら意味がないと思っています。自分が点をとってチームが勝つ。『宮代が点を取ったら勝つ』と言われるぐらい、勝負強いストライカーになりたいし、そういう状況や流れを作りたい。それは、ずっと思っていますね」
宮代大聖が小林悠のゴールに震えた日
これだけならFWとしての“模範解答”という印象もあるが、宮代は「実は具体的なシチュエーションがあって……」と詳しくイメージの中身を明かしてくれた。
「超シンプルなんですけど、0-2になったときに、3点決められる選手が理想です。0-2って勝利への兆しが見えにくくなっていて、チームとしてはよくない状況ですよね。そういうときに流れを変えられる選手になりたい。それって要するに、1点、2点、3点と取れるストライカーじゃないですか」
宮代がこれだけ具体的に語ったのには理由があった。
それは宮代がまだプロになる前のU-18時代、等々力で目にした「ある試合」に衝撃を受けたからである。
「仙台とのホームゲームで、アキさん(家長昭博)が退場して、悠さん(小林悠)が2点決めて勝った試合があったんです」
2017年10月14日、J1リーグ第29節の川崎フロンターレ対ベガルタ仙台。家長昭博が前半で退場し、10人で0-2という絶体絶命の状況から、フロンターレが残り10分で3点を奪って逆転勝ちした伝説的な試合である。延長戦(Vゴール)が廃止された2003年以降、10人で2点差をひっくり返したのは、J1史上初の快挙だった。同年チームはJリーグ初優勝を達成しているが、この仙台戦の逆転勝利がターニングポイントだったと口にする選手も少なくなかった。
試合終盤、同点弾と逆転弾を決めたのは小林悠だった。劇的なゴールで歓喜に沸く等々力のピッチ。その中心で咆哮するストライカーは、宮代が目指す理想像になった。
「悠さんは、まさにチームが苦しいときに勝たせられるストライカー。あの試合で『こういう選手になりたい』と確信しました」