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“元オカダのライバル”SANADAはプロレス界の「景色を変える」ことができるのか? 師・武藤敬司の“あの技”を解禁した男の覚悟
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/04/07 17:12
ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを脱退し、生まれ変わったSANADA。『NEW JAPAN CUP』優勝を手土産にオカダ・カズチカと激突する
準決勝には黒髪で登場。トレードマークだった髭もなくなっていた。マーク・デイビスをやはり変型DDTで破ると、決勝の相手はデビッド・フィンレーに。トーナメント初戦で突如バレット・クラブの新リーダーとして登場し、「THE REBEL(反逆者)」と自称するようになったこの男もまた、大きな変化の時を迎えていた。
お互いが感情をあらわにした長岡の地での熱戦は、SANADAが師・武藤の代名詞のひとつでもあるシャイニング・ウィザードを放ち、変型DDTで終止符を打った。
頭から突き刺すフィニッシュホールドと、シャイニング・ウィザード。「ずっと避けていた技」をあえて使ったのは、明確な形として表現することで迷いを消し、変化を進めることができるからだった。過去やこだわりに囚われなくなった男は、春の両国決戦『サクラ・ジェネシス』でオカダの対角線に立つ。
「中堅選手で終わるつもりはない」SANADAの覚悟
一夜明け会見で「中堅選手で終わるつもりはない」と言い切ったSANADAは、「(IWGP世界ヘビー級のベルトを)他の人が巻いても想定内かなと思っちゃうんですよね。(自分が巻いている姿は)想像できないじゃないですか?」とも発言。それは、自身がオカダのライバルという立ち位置から一度は転落したことを認めなければ出てこない言葉だった。
冒頭に記した通り、「新しい景色」という言葉はじつに様々な使い方をされる。固定観念に囚われず、現状を打破し、新たな視点や価値観を生み出す――しかしいかなる場合でも、その実現に欠かせないことがある。それは「過去を受け入れる必要がある」ということだ。過去と正しく向き合い、残す部分と変える部分を整理することで「新しい景色」は生まれる。換言するなら、「新しい景色」とは高レベルでの旧と新のハイブリッドなのだ。
「前よりは一発一発、魂がこもるようになった」
手にした結果が自信を深めさせ、新たな自分が真の自分になる。
結果が出れば追い風も吹く。猛威を振るう変型DDTは、自身の「1番のヒーロー」であるHi-STANDARDの難波章浩氏によって“デッドフォール”と命名された。個人史の点と点が線となり、新たなSANADAの輪郭を強調し始めた。
“元オカダのライバル”は、あの頃の続きではなく、“今のSANADA”として最高峰のベルトに手を伸ばす。
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