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清原和博&勝児だけじゃない! 娘と“父子二代”の夢を叶えた元阪神・久慈照嘉が振り返る36年前「完全アウエーの」壮絶すぎるPL学園戦
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS / SANKEI SHIMBUN
posted2023/03/29 11:01
現役時代の阪神・久慈照嘉と愛娘の愛。目元の表情がそっくり?
部員10人の近畿勢。スタンドの応援に気圧され、9回まで1点負けていた。辛くも逆転勝利。久慈さんは「試合後、そのままグラウンドに向かって夜まで練習したんです」と苦笑いで当時の思い出を語っていた。
2回戦も兵庫の滝川二と対戦し、自分たちの4安打をはるかに上回る11安打を浴びながら、わずかなスキをつく好走塁で挙げた1点を守り切った。準々決勝は4対0で熊本工を下し、運命の準決勝へと駒を進めた。
歴代最強のPL相手に繰り広げた死闘
相手はPL学園。立浪和義、片岡篤史、野村弘樹、橋本清らのちにプロで大活躍する逸材を並べ、春夏連覇を成し遂げる超大型チームである。つまり東海大甲府は負けるのだが、久慈さんの言葉を借りるなら「あと1点。1点取れていれば歴史は変わっていた」という死闘だった。
先発の野村を3回途中でノックアウトし、5対0。2回戦、準々決勝を連続完封しているエースの力からいっても、十分に逃げ切れるはずだった。そんなゲームプランが大きく崩れたのが6回。不運なヒットから始まった。
「(ショートの)僕とレフトの間に落ちた打球が二塁打になってしまって……。結局1イニング4二塁打。大会記録だったはずです。一気に追いつかれてしまって。PL学園は優勝候補の筆頭格。やはり球場の雰囲気はアウエーでしたね」
追いつかれても粘ったが、力尽きた。延長14回、二死満塁からの決勝打も二塁打だった。1試合6二塁打も当時の大会新記録。立ち合い早々、横綱を土俵際まで追い詰めながら金星を逃がした。
「PLにはすごい投手が3人いましたが、僕たちはエースだけのチームでした。当時でもすごく監督さんが叩かれたのを覚えています。投げさせすぎだった。序盤のリードで前半から快調に飛ばしていたけど、確かに5回からは急速にスピードが落ちましたから」