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「巨人ドラフト6位だった男」戸郷翔征の原点…他球団スカウト「ブン投げですからねぇ…」否定的評価をひっくり返し、侍ジャパンになるまで 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2023/03/10 17:50

「巨人ドラフト6位だった男」戸郷翔征の原点…他球団スカウト「ブン投げですからねぇ…」否定的評価をひっくり返し、侍ジャパンになるまで<Number Web> photograph by KYODO

WBC中国戦7回。ピンチをしのいだ日本2番手の戸郷翔征(右)を迎える大谷翔平

 投手に吉田輝星(金足農→日本ハム)、奥川恭伸(当時2年、星稜→ヤクルト)、野手に根尾昂(大阪桐蔭→中日)、藤原恭大(大阪桐蔭→ロッテ)、小園海斗(報徳学園→広島)、蛭間拓哉(浦和学院→早稲田大→西武)……その年、翌年と、4年後の2022年ドラフトで1位指名されることになる逸材が6人。もちろん彼らの「甲子園後」にもすごく興味があったが、高校球界選りすぐりのバットマンたちを向こうに回して、あれから1年経った戸郷翔征がどう立ち向かうのか……そちらのほうを、どうしても確かめたかった。

 高校ジャパンのベンチはすごくリラックスしていた。あの激烈な闘いを繰り返した甲子園大会から10日ほど。頑張った「ごほうび」みたいなアジア選手権を前にした練習試合だ。笑い声が響き、冗談が試合前のジャパンのベンチで飛び交っていた。

 適度に肩の力が抜けて、のびのびとバットを振り抜いてくる高校ジャパンの強打者たち。この時とばかりに力んで腕を振ってくる戸郷が、炎上しなければよいが……そんな心配もまもなくして、杞憂に帰していた。

U-18日本代表から5回1/3・8奪三振

 試合は宮崎県選抜の先発投手の乱調でいきなり2失点。初回の2死三塁でリリーフのマウンドに上がろうとは、戸郷も思っていなかっただろう。そんな「試練」から、「快投」が始まったから驚いた。

 明らかに、狙って三振を奪いにいっていた。宮崎県選抜とはいえ、初対面の選手も何人もいるから、守っている野手の技量がわからない。打たせてエラーされては、3点目を奪われる……試合後、戸郷翔征はそんな本音を漏らしていた。

 今季、立正大から日本ハムにドラフト5位で進んだ奈良間大己(常葉大菊川)を、鋭く動くボールで意思通り、空振り三振に切ってとると、その先の5回1/3で8三振を奪いながら、ジャパン打線を抑えてしまったから、やっぱりな……と膝を叩いた。

 前年夏の甲子園からの1年間で、スピードはアベレージで10キロ近くアップし、豪快なサイドハンドからコンスタントに145キロ前後をマークした。

 変化量は大きいのに変化点の近いスライダーとフォークを交えて、「高校ジャパンがなんぼのもんじゃい!」とばかりに、真っ向勝負の熱投に、逆にジャパン打線のほうがひるんだようにも見えていた。

他球団スカウトが語った「ブン投げですからねぇ…」

 右打者は踏み込めず、左打者は腰が退けていた。確かに、どこにボールが来るのか……ちょっと怖いようなフォームだったが、球道はそこまで荒れてはいない。リリースの瞬間に、しっかり指先を縫い目にかけている確かな感覚があった。

 このピッチャーが使えなくて、いったい誰が……U-18日本代表が繰り出してくる甲子園のスター投手たちの方が、むしろ平凡に見えたものだ。

 それからドラフトが近くなって、ネット裏のスカウトたちと話す時に、それとなく、戸郷翔征の評価を訊いてみた。

【次ページ】 他球団スカウトが語った「ブン投げですからねぇ…」

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