- #1
- #2
野球クロスロードBACK NUMBER
元中日・平田良介は「落合博満に救われた」…たった一つの“助言”とは? 現役引退の報告は「何度か電話かけてるんですけど…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2023/02/01 11:01
昨年末に現役引退を発表した平田良介。名将・落合博満とのエピソードを、Number Webのインタビューで語ってもらった
若き平田に落合の「金言」
若手時代の平田は、折に触れ落合からこんな呟きを聞かされたことがあった。
「お前は、守備は言うことないんだけどなぁ」
それはすなわち、バッティングの向上を促されており、そこさえクリアできればレギュラーになれるといった示唆でもあった。
中日の本拠地・ナゴヤドームで試合前などにバッティング練習をしていると、落合から独特の言い回しでこんな指摘をよく受けた。
「平田、天井を見てもなにもないぞ」
バッターには、「体を開かずに打つ」という表現がある。右バッターの平田は、スイング時に早くピッチャーと正対してしまっていた。それは、肩(体)の開きが早いためであり、プロの視点からすれば上体がのけぞっているようでもあった。落合が「天井を見ている」と表現したのは、おそらくそのためだ。
バッティングフォームが崩れているから、バットからボールへ十分に力を伝えきれずにいたし、変化球で攻められればゴロが増える。そんなシーンが目立っていた若き日の平田が、落合から助言されたのはたったひとつ。
「ピッチャーの足元を狙って打ちなさい」
これだけだった。照準を下げることにより、平田の悪癖を改善する目的もあったのだろう。この、たったワンセンテンスが、「将来、うちの主力になってくれる」と監督に言わしめた逸材を目覚めさせた。
入団時の背番号「8」から「40」へと変更された、プロ6年目の11年。平田は自己最多となる113試合に出場するレギュラーとなり、11ホームランと結果を残した。
「打球を狙う方向が決まると、ほんとバッティングってよくなるんですよね。スイングとかのズレも分かって修正点にも気づくようになるから、バッティングの引き出しも増えてくる。好不調の波が少なくなっていきました」
11年は落合にとって最後のシーズンでもあった。リーグ優勝に貢献して報いた平田は、監督から背番号が変わった背景を知らされた。