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野球クロスロードBACK NUMBER
「中日にセレモニーを要求」と報道されて…平田良介がいま明かす“あの退団会見”の真相 34歳の引退決断は「家族を養っていくことを考えたら…」
posted2023/02/01 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
2021年4月上旬、深夜。
中日の平田良介はベッドから飛び上がるように目が覚めた。胸が苦しい。動悸が激しく、まともに呼吸ができない。家族がすぐに救急車を呼び、病院へ搬送されている車中で血圧を測ると、130未満が正常とされる数値が188まで上昇していた。
2年前、突如襲った病気
「これ、死ぬんちゃうん?」
恐怖心が襲う。幸いにも病院で応急処置を受けると症状が治まったため、入院せずに済んだ。ところが、3週間後にまた動悸と呼吸困難で苦しみ、再び救急医療へと向かった。
異型狭心症。
医師から告げられたのは、聞き馴染みのない病名だった。心臓の血管が極度に縮むことによって発症する病気なのだというが、不摂生どころかアスリートとして人一倍、体に気を配っていた平田からすれば、「なんで?」という疑念しか浮かばなかった。
「トレーニングだってサボっていたわけじゃないし、食事だって嫁が気を使ってくれていたり体調管理しているのに、急に病気になりました――すぐには納得できないですよね」
4月の下旬に一軍登録を抹消された平田は、まともに野球ができなくなった。それどころか、病は日常生活に支障を来していく。
「体調管理できてないから、とか書かれたり」
まず、運転ができない。ハンドルを握り、アクセルを踏むと、まるでジェットコースターが急降下したような感覚に襲われる。「やばい!」。危険を察知して路肩に車を停める。正常なら自宅から15分程度で着く球場まで、40分ほどかけ安全運転で向かう日もあった。
本当ならばゆっくり体を休められるはずの夜も、平田にとっては苦痛だった。胸が苦しくなると、寝返りを打つのも辛い。動悸や息切れの症状が気になり、眠ることすらままならなくなっていった。そんな状況ではあるが、敏感なアスリートはふと冷静にもなる。
「あ、筋肉がしぼんでる」
9月の下旬に実戦復帰こそできたが、肉体の衰えは平田を落胆させた。ウエートトレーニングでスクワットをする。180キロのバーベルを持ち上げられた肉体は、80キロで悲鳴を上げた。正確には踏ん張ろうと息を止めると、胸が苦しくなり動きが止まるのだ。