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史上最強の呼び声も! WBC侍ジャパン栗山監督が考える大谷翔平の”一番いい場所”とは? 5年越しに実現される「2番」起用の可能性
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/10 17:10
WBCに臨む記者会見でがっちりと握手を交わした栗山英樹監督と大谷翔平
いまのNPBで攻撃的2番打者の先鞭をつける形となったのは、巨人・原辰徳監督による坂本勇人内野手の抜擢だった。2019年に3度目の監督に復帰した原監督が坂本を2番に起用すると、生前の野村克也元ヤクルト監督や“球界のご意見番”広岡達朗元西武監督らが、猛烈なダメ出しをして批判をしていたのが忘れられない。しかし19年の巨人は「2番・坂本」がピタリとはまり、これがきっかけとなって他チームでも攻撃的2番打者の起用が浸透していくことになる。
攻撃型2番打者を最初に起用した監督とは…
ただ、実は筆者が知る限りでは、この攻撃型2番打者を最初に起用したのは、このときの原監督ではなく、1998年に清水隆行外野手を2番に使った巨人・長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)だった。仁志敏久内野手との1、2番コンビで「送りバントと併殺の少ない攻撃的2番打者」を目指すことをミスターは宣言。2000年代初頭にかけて、巨人の打線の1つの目玉となった。しかしその一方でチーム状態が悪化すれば「緻密さがない」と批判され、当時はメジャーでもまだ「3番最強」という考えが主流で、球界全体に波及するまでに至らなかったのが実情だ。
そしてその後にMLBで2番に最強打者を据える考えが浸透すると、すかさず二刀流の大谷を「2番」で起用したのが栗山監督だったのである。
2017年4月6日のロッテ戦。この試合に大谷は「2番・指名打者」で先発している。第1打席に四球を選ぶと、その後は中飛、空振り三振、中越二塁打の3打数1安打。当時は二刀流で先発の前日と翌日にはオーダーを外れる大谷の「一番いい場所」を模索していたところがあり、その中で栗山監督の頭に浮かんだのが「攻撃的2番」での起用だった。
しかし結果的にはこの思惑は失敗した。
鮮明に覚えているのは、翌日の試合前の栗山監督の記者囲みでの言葉である。