酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
年俸4.25億円ダウンの田中将大…日本復帰の2年間は“不運な無援護”なだけで「一線級の先発」だった? 23年の逆襲に期待したいワケ
posted2023/01/11 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
楽天の田中将大の年俸が大幅にカットされたことが話題になっている。
例によって金額は推定だが、9億円から4.25億円もダウンしたという。NPBで最も高給取りだった田中だが、今回の減俸でその座を明け渡すのだろう。
田中の年俸は、どのくらいが妥当だったのかは筆者にはわからない。年俸の査定は複雑で、田中は実績に加えてMLBヤンキースでの活躍もある。さらに高校時代からの知名度も抜群だ。いろんな意味でNPBナンバーワンの選手という評価だったのだろう。
田中将大が「一線級の先発投手」だと証明する数字の数々
しかし今回の大幅ダウンによって「日本に帰ってきた田中将大は、うまくいっていない」かのようなイメージで語られることには、大いに違和感がある。
数字で見る限り――田中はこの2年間、一線級の先発投手としてチームにしっかり貢献してきたのだ。
2021と2022年、2シーズン合計でのイニング数が300イニングを超えたのは両リーグ合わせて10人しかいない。その成績は以下の通り。
山本由伸(オ) 52試33勝10敗386.2回411振82球 率1.54
高橋光成(西) 53試23勝17敗349.1回255振113球 率2.99
森下暢仁(広) 51試18勝15敗342回265振96球 率3.08
柳裕也 (中) 51試20勝17敗325.1回292振78球 率2.88
戸郷翔征(巨) 51試21勝16敗323.1回292振109球 率3.40
青柳晃洋(神) 49試26勝10敗318.2回236振80球 率2.26
田中将大(楽) 48試13勝21敗318.2回252振59球 率3.16
上沢直之(日) 47試20勝15敗312.1回262振98球 率3.08
伊藤大海(日) 49試20勝18敗301.2回253振102球 率2.92
大野雄大(中) 45試15勝19敗300.1回226振63球 率2.70
オリックスの山本由伸がイニング数でも奪三振数でも防御率でも飛びぬけている。まさに「無双」の働きだ。
しかし以下の9人はほぼ同じような成績で、彼らがNPB各球団のエース級と言ってよい。田中は6位タイの318.2回を投げていて、この中では大野雄大と並び最年長である。
ちなみにソフトバンク(最多は石川柊太/292.2回)、ロッテ(小島和哉/289.1回)、ヤクルト(小川泰弘/281.2回)、DeNA(今永昇太/263.2回)には2年で300イニング以上投げた投手はいない。
ここ2年の楽天で最も多くのイニングを投げている
田中将大はここ2年、楽天で最も多くのイニングを投げている。これに続くのは岸孝之(290回)、則本昂大(269.2回)。野球の投球回数とは「アウトを取った数」だから、楽天では田中将大が最も多くの打者をアウトにした投手になる。
そして田中は300イニング以上の投手では、与四球数は最少の59、最も制球力が良かったのだ。しかしながら勝利数は300回以上の投手では最少の13勝、最多のオリックス山本由伸は33勝、楽天でも岸は17勝、則本は21勝している。そして敗戦数21は、全投手中で最多だ。