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本田圭佑が10年前、ブラジル戦完敗後に語っていた”それでも世界一を目指す理由”…「なんか嬉しくなる気持ち、わからへんかな?」 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/01/15 11:00

本田圭佑が10年前、ブラジル戦完敗後に語っていた”それでも世界一を目指す理由”…「なんか嬉しくなる気持ち、わからへんかな?」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2012年10月のブラジル戦で0-4の完敗を喫するも1トップとして存在感をみせた本田圭佑。W杯優勝の目標はブレていないと語っていた

「自分がサッカーをやり始めたきっかけもブラジルと無関係ではないし、その代表と初めて試合をできた。勝てたらそれはそれで偉そうにできて良かったかもしれへんけど。でも、下馬評どおり、案の定負けて。なんか嬉しくなる気持ちわからへんかな?」

――ワクワクするような?

「いや、なんて言うの。こんな簡単に勝てたら、この先おもしろくなくなるやん、みたいな」

W杯優勝の目標はブレてない?

――本田くんはずっとW杯で優勝すると言ってきた。その目標はブレてない?

「もちろん。当然でしょ。そもそも点差ほどの差はないと思ってますから」

 負けたあとに、これほど生き生きとした表情をしている本田を見るのは初めてだった。このミックスゾーンの様子を考えれば、「おもしろかった?」という第一声はごく自然なのかもしれない。

 搭乗ロビーのカフェの横に立つ本田に対して、「めちゃくちゃ、おもしろかったよ」と答えた。すると本田は満足そうにうなずき、ゆっくりと白いスーツケースを引きながら搭乗ゲートの方へ歩いていった。

 まるで、これから道場破りにでも出かけるかのようなオーラを漂わせながら。

 2012年10月中旬、日本代表はザッケローニ監督が就任して初となるヨーロッパ遠征へ旅立ち、サンドニでフランス代表と、ウロツワフでブラジル代表との親善試合を行なった。ザッケローニ監督が「引いて守るだけの戦いはしたくない」と意気込みを語ったように、日本代表の現在地を測る絶好のチャンスだ。

 本田自身もこの2連戦をとても楽しみにしていた。ヨーロッパ遠征前、CSKAモスクワの練習場でこう語った。

「自分の中でW杯優勝という目標への確信は、この2年間で確実にでかくなっている。ただ、アジア最終予選を戦っているだけではわからないものがある。フランスとブラジルとやることで新たな物差しができると思う」

 アジアではわからない未知の強豪との遭遇。親善試合以上の価値が、そこにはあった。

 そういう意味で、フランス戦は香川真司のゴールで1対0で勝利したものの、物足りない試合になった。本田が右足のケガのため出場できず、前線でボールをキープできなかったことも響き、フランスのスピードとパワーに圧倒されたからだ。

 試合翌日、本田は記者団に対して「あの内容が最低ライン」と、防戦一方になったことに注文をつけた。

 だが、日本は過ちを繰り返さなかった。

 続くブラジル戦では、本田が1トップの位置に入り、チーム全体でリスクを冒し、自分たちの実力をさらけ出すことを恐れなかった。

 相手に次々と得点を決められても、本田はゴールを狙い続け、ネイマールと同じ両チーム最多となる5本のシュートを放った。

「この先、こういう相手を負かすために、また頑張ることができる。明日からの練習が、また楽しみやなと思えるような試合でした」

 TVカメラの前で語ったこの言葉は、決して負け惜しみではないだろう。どうやら本田は、相当大きな収穫を手にしたらしい。

 いったいブラジル戦のピッチで何を見て、何を感じたのか? それを知るためには、モスクワへ向かうしかない。

【次ページ】 負けたのに、希望を感じた

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