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本田圭佑が10年前、ブラジル戦完敗後に語っていた”それでも世界一を目指す理由”…「なんか嬉しくなる気持ち、わからへんかな?」
posted2023/01/15 11:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Takuya Sugiyama
Number815号(2012年10月25日発売)に掲載された『本田圭佑「W杯優勝の夢はぶれてない」』を特別に無料公開します。<全2回の前編/後編へ>
2012年10月16日、ポーランド・ウロツワフ空港。直前に終わった日本対ブラジル戦の熱狂が、はるか昔であるかのように、搭乗ロビーは静けさに包まれていた。
試合後、本田圭佑らヨーロッパでプレーする選手たちは、そろって移動することになっていた。まず全員でミュンヘンに飛び、そこから各自の目的地へ向かう。筆者も偶然、同じ便に乗ることになった。
搭乗までの時間、ひとりでカフェに入り、ノートを見返しながら、あらためて先ほどピッチで起こったことを整理していた。そのとき、ふと気がつくと横に人の気配を感じる。
誰だろう……と思って顔をあげると、サングラスをかけたスーツ姿の本田が立っていた。
思わず「おぉ」と身をのけぞらせると、この日本代表のエースは唐突に、こう問いかけてきた。
「試合、おもしろかった?」
ブラジル戦完敗は”想定内”だったのか
普通、負け試合のあとは、悔しさをにじませた第一声を発するものだろう。だが、本田はその逆だった。まるで完勝したかのように、「おもしろかったでしょ」と同意を求めてきたのである。
この約2時間前、スタジアムのミックスゾーンにおいて、筆者は本田とこんなやり取りをしていた。
――ちょっといい?
「1、2問ね。負けたあとに、あんまり長く話すのは好きじゃないから」
――0対4というスコアは想定内だった?
「いや……想定外ですよ。まさか4点も取られるとは思ってなかったし。負けには変わりないけど、ここまで開くとは思ってなかった」
――今日の結果から課題は見えてきた?
「当然でしょ。とりあえずわかってることは、オレらよりブラジルの方が上やったってこと。でも、なんか嬉しくて。サッカーやってて、久しぶりに楽しい気持ちになれた。こんなに楽しい試合は久しぶりやなっていうのが、今日の感想かな」
――その感覚を、もう少し説明して。