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「大谷翔平は神様のプレゼント」「巨人軍誕生は“文部省の待った”が一因?」87歳慶大名誉教授が知る「野球伝来150年」ウラ話 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/01/01 11:02

「大谷翔平は神様のプレゼント」「巨人軍誕生は“文部省の待った”が一因?」87歳慶大名誉教授が知る「野球伝来150年」ウラ話<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

長嶋茂雄、大谷翔平にイチロー……87歳池井優名誉教授が野球伝来150年について大いに語ってくれた

マッシー村上が適用を受けた「ホームシック条項」

〈日本人選手のMLB挑戦〉
 次のエポックメイキングになったのは、日本人選手の大リーグ挑戦です。最初は南海の村上雅則が野球留学から大リーグに引き上げられる。当時は村上がこのまま活躍するとアメリカに取られちゃう。早く帰って来いということで、日米双方のコミッショナーの合意で「ホームシック条項」の適用を受けて帰ってくる。ま、村上さんはホームシックと一番縁のない人なんですけれども(笑)。

 それから30年を経まして野茂英雄が登場した。「大リーグってのはそんな甘いもんじゃないよ」と言われましたが、“ナスティ・フォーク”と言われるえげつないフォーク、さらに速球にものを言わせてバッタバッタと三振を取った。

 そうなると“日本人のピッチャーは使えるぞ”という認識が大リーグに植え付けられた。その後、続々と日本人投手が海を渡ったわけであります。

 アメリカは、日本人選手を取るとどういうメリットがあるか? 第1に戦力になる。第2に観客動員も増える。野茂がドジャースタジアムのマウンドに上がるときは、付近の日本人とかツアー客が押し寄せて、吉野家の牛丼が売られ「冷えたビールあります」とまでになった。

 さらには日本人選手は、自己犠牲をいとわないプレーを高校野球で叩き込まれておりますから、野球の基本というものをよく知っている。そして真面目である。こういう形で日本人選手の大リーグ挑戦が続いたわけであります。

FA委員を務めた教授が見たイチローのポスティングシステム

〈イチローから大谷翔平へ〉
 さて、投手は中4日で5日に一度だけど、野手だったらば毎日出場できるじゃないか。そこで大リーグが目をつけましたのがイチローでありまして、イチローも行きたい。ところが黙って出て行かれるとオリックスとしては大損であります。

 かつて私も委員の一人でありましたFA問題等研究専門委員会が、その数年前にドラフトでくじ引きで球団が決まるのはあまりにも気の毒だから、何年かやったら自分で行き先を選べるようにした。ところが大リーグに行くなんてことは誰も考えない。しかもイチローはFAの資格を得るのは2年後、そこで利用したのがポスティングシステムでありました。

 日本の球団が出してもいい、アメリカの球団が取りたいとなれば入札をいたしまして、一番高値をつけた球団から相当のポスティングフィーが日本の所属球団に入るというシステムでイチローはアメリカに渡ったわけであります。

【次ページ】 W杯の熱狂の後、WBCで大谷やダルが帰ってくる

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