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オシム「日本サッカーには豊かな未来が開けている」死の1カ月前に遺した伝言… 冨安健洋20歳を「エレガント」と絶賛した日とは
 

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/12/29 11:07

オシム「日本サッカーには豊かな未来が開けている」死の1カ月前に遺した伝言… 冨安健洋20歳を「エレガント」と絶賛した日とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

イビチャ・オシム。日本サッカーのために、文字通り尽力してくれた名伯楽だった

 オシムは田村氏との対話で「世界チャンピオンになるまで仕事は続くな(笑)」と、彼らしいウイットに富んだ切り返しを見せた。それに謙遜した田村氏に対して、こう続けるのがオシムらしさでもある。

「いや、考えていることは口にすべきだ。どうして不可能といえるのか」

そういう選手を持たないチームは、絶対に優勝できない

<名言2>
ひとりで試合を変えられる選手たちの時代が、これからやって来るかもしれない。
(イビチャ・オシム/Number833号 2013年7月25日発売)

◇解説◇
 個か組織か、ではなく、個も組織も。コレクティブなサッカーを標榜したオシムも、決してスペシャルなタイプのプレーヤーを軽視したわけではない。

 それは49歳にしてユーゴスラビア代表(当時)監督として臨んだイタリアW杯で、ドラガン・ストイコビッチの才能を存分に引き出しつつ、チーム力を上げてベスト8進出に導いたことが証明している。

 さらに日本代表時代にはチームのベースを作り上げると、当時セルティックで活躍していた中村俊輔を組み込んだことからも分かる。

 チームプレーと個人能力のバランスについて、オシムが語っていたのは2013年コンフェデ杯でのこと。この大会で縦横無尽の活躍を見せたネイマールを引き合いに出し、「ひとりですべてをこなすのは、チームにとって決していいことではない。ひとりに頼りすぎて、チームそのものが強固にならないからだ」と集団としてまとまったプレーの重要性をオシムは説く。その一方で、個の力の重要性も十分に認識している。

「今日もそういう選手は存在し、チームは彼らを必要としている。あらゆる大会が明らかにしているのは、そういう選手を持たないチームは、絶対に優勝できないということだ」

 ロシアW杯で19歳にして衝撃のスピードと決定力を発揮したエムバペが、そしてカタールW杯では35歳と円熟したメッシがそれぞれ母国をW杯優勝へと導いた。輝く才能をいかにしてチーム戦術の中で最適化するか。オシムはサッカーの普遍性を語っていたと言えよう。

16番はとりわけ守備が素晴らしい。エレガントだ

<名言3>
私が日本で仕事を得られればいいのだが。今の私は走ることができるぞ。
(イビチャ・オシム/NumberWeb 2022年4月9日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/852749

◇解説◇
 オシムは亡くなる直前まで、日本サッカーについて案じ続け、フラットに評価し続けてきた。

「日本は多くの選手がヨーロッパでプレーしており、私は毎日のように試合を見続けている。君に言いたいのは彼らがすでに多くを学びチームの中心になっていることだ。スピードや俊敏さなどで違いを作り出している。それはヨーロッパ人にはない日本人の資質だ」

 このように選手たちに鋭い視線を向け、評価してきた。

 例えば2019年コパ・アメリカをテレビで観戦した際のことである。

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