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オシム「日本サッカーには豊かな未来が開けている」死の1カ月前に遺した伝言… 冨安健洋20歳を「エレガント」と絶賛した日とは
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/12/29 11:07
イビチャ・オシム。日本サッカーのために、文字通り尽力してくれた名伯楽だった
「16番は、見るのはほぼ初めてだがここ最近で凄く進歩したのではないか。さっきも聞いたが所属はどこだ?」と熱を持って話し始めた。
オシムが注目したのは、冨安健洋である。
「チームの大きな力になるし、他の選手に保障を与える。16番のような選手は、プレーをよく知っているしボールをよくキープして正確にプレーができる。とりわけ守備が素晴らしい。エレガントだ」
「空中戦も強く、ボールをキープして攻撃に転じるべきときには確かな技術で着実にプレーしている。今日のサッカーはそんな風に後ろからプレーを構築していくべきだが、それができる選手がいなければ難しい」
当時20歳だった冨安のディフェンダーとしての才能を高く評価し、今ではプレミア名門アーセナルの主力となった24歳の才覚を見抜いていたのだ。
もしオシムが存命でカタールW杯、冨安だけでなく三笘薫や堂安律、田中碧に板倉滉ら新世代の躍動ぶりを見ていたら、どのように映っただろうか――その言葉を聞けなかったのは残念だが、オシムが示し続けた「サッカー選手に対する評価基準」は、ファンの中にも刻まれている。
夢を見たっていいじゃないか?
<名言4>
夢を見たっていいじゃないか?
(イビチャ・オシム/Number773号 2011年2月24日発売)
◇解説◇
イビチャ・オシムはトレーニングで選手をロジカルに鍛える理論派であった一方で、ジョゼップ・グアルディオラが率いてメッシやイニエスタが輝いた頃のバルセロナを高く評価するなど、流麗なサッカーを愛するロマンチストでもあった。
日本代表監督に就任したものの、突然の病によって志半ばでその任を離れたオシム。しかし代表アドバイザーに就任した2008年6月の記者会見で「皆さんの夢の方向が揃えば、サッカー界は前進する。そこから変化が始まる」とも話していた。
日本代表がベスト8以上という新たな景色・境地にたどり着くために。今はオシムが口にしたように……少しぐらい大げさな夢を描くべきなのかもしれない。
「日本は最高の環境で最高のサッカーを実現できる条件が整っている。スタンドは観衆で溢れピッチコンディションは素晴らしい。若く才能に溢れた選手たちがそこで躍動する。日本サッカーには豊かな未来が開けている」
田村氏との“最後の対話”でオシムが語った日本サッカーへのエールだ。名伯楽が夢見た豊かな未来へ。2023年以降も歩みを止めてはならない。
<つづく>
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