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オシム「日本サッカーには豊かな未来が開けている」死の1カ月前に遺した伝言… 冨安健洋20歳を「エレガント」と絶賛した日とは
posted2022/12/29 11:07
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takuya Sugiyama
<名言1>
自分が自分を信じてなかったら、誰が自分を信じるんだ?
(イビチャ・オシム/Number631号 2005年6月30日発売)
◇解説◇
2022年、81年の生涯を閉じたイビチャ・オシム。指導者として日本代表、Jリーグともに大いなる愛情をもって仕事にいそしんだのは周知のとおりだ。その慈愛は日本を離れてからも続いた。
オシムは旧知の取材者であるライター田村修一氏らを通して、Numberに対して数々の言葉を日本サッカーのために残してくれた。その最後の肉声となったのは、この世から去る1カ月前のことだった。
「実はあまりよくない。うまく歩けないからだ。膝が悪くて……、以前のように歩くことができない。手術が必要と言われているが……。膝と靭帯の手術だ。もしも靭帯が完全に破損したら、歩行が不可能になるし何もできなくなる」
当時、オシムは自身の状態について正直にこう語っていた。心身ともに非常に厳しい状況だったのは明らかだが、田村氏に対してこう切り出した。
「あなた方は勝ち点3を得たのだな」
「予選を突破できたのだから。ジャーナリストも仕事が増えて嬉しいだろう(笑)」
この時、日本代表は雌雄を決するアウェーのオーストラリア戦に臨み、三笘薫の2ゴールによってW杯出場権を獲得した。森保一監督率いる日本代表がアジア最終予選序盤戦で苦しんでいることはオシムの耳にも入っており、「あなた方は進歩した。本大会出場を果たしたのは素晴らしいことだ。サポーターをはじめすべての日本人が喜んでいるだろう」と日本代表へのねぎらいを口にしたのだ。
「いや、考えていることは口にすべきだ」
いつの時代も、オシムは日本サッカーに目をかけていてくれた。
冒頭の言葉は、ジェフ時代のものである。多種多彩なトレーニングメニューはもちろん、選手やクラブスタッフだけでなく、関わるメディアも頭を使って考えさせられる哲学的な言葉に、多くの人が魅了されていった。
「他人の言葉がどうこうじゃなくて、諺にあるように、『自分の馬を信じろ』ということだ」
ジーコ監督が率いていた日本代表に対してのエールを請われると、「皆さんがわかっていることだから何も言うことは無い」と言いながらも、独特の言い回しでW杯での健闘を祈った。