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栗山英樹監督が立てていた「WBCで世界一」の“フラグ” とは? 大谷、ダルビッシュ…史上最強のスター軍団を束ねる指揮官が描く「物語」
text by
木下大輔(日刊スポーツ)Daisuke Kinoshita
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/12/25 06:00
サッカー日本代表の森保監督に続き、同じ人情派の栗山監督が来春、日本中を熱くする?
WBCへ向けて、張られた伏線とは?
実は、今回のWBCへ向けても、しっかりと伏線を張っていた。冒頭の日本ハムの監督としての役目を終えた21年シーズン最終戦の試合後のこと。侍ジャパンの監督就任が発表される前ではあったが、今後の野球人生は第何章になるか?と問われて、次のように答えていた。
「第4章。起承転結。最後の結だろ。子どもの頃から選手時代があって、(指導者として)準備する20年間(解説者として)仕事させてもらって、この10年間があって。起承転があって最後、自分が何をするんですかって。もうここからは恩返しだけどね。野球以外だったり、子どもたちだったり。自分のことより、どれだけ恩返しできるか。最後、けじめを付ける」
集大成として、世界一奪還で野球に恩返しするという“フラグ”を立てていたのだ。
栗山監督の旗の下に、大谷翔平や、ダルビッシュ有らも参戦を表明した。大谷とは花巻東高時代の初対面から「世界一の選手を目指そう」と二人三脚で進んできた。批判覚悟で投打二刀流を推し進めてメジャーで認められたプレースタイルを、世界一への切り札にするドラマは、栗山監督しか描けないシナリオだ。日本ハム時代は入れ違いでメジャー移籍してしまったダルビッシュには、「一生に1回でいいから、ダルビッシュとメンバー表に書かせてくれ」と伝えていたという。日本ハムの監督時代はかなわなかった夢をフックにして、新たな物語の起点が造られた。
対戦相手も史上最高の戦力を整えてくる。米国を始め、第一線のメジャーリーガーたちが集う今大会。こういう難局こそ、燃え上がるのも栗山監督だ。
「ターゲットがでかければでかいほど、人の良さを引き出すこともある。相手の力も借りて、こっちの良さを最大限に発揮する」
日の丸を世界一高く掲げるための物語とは−−。どんなフィナーレになるかは、野球の神様だけが知るところだが、栗山監督ならきっと最高の脚本を仕立てるはずだ。そのドラマに選手と野球ファン、さらに普段は野球に興味のない人たちも全て巻き込めた時、指揮官の座右の銘「夢は正夢」は現実のものになる。
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