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「高卒1年目でよくやってる」と言われるけど…19歳松川虎生が明かした“周囲の声”とのギャップ「悔しい1年だったとしか言えません」
posted2022/12/22 17:02
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph by
Hideki Sugiyama
ひとり、ベンチで涙を流した。
8月12日、ZOZOマリンスタジアムでの北海道日本ハムファイターズ戦。千葉ロッテマリーンズのドラフト1位ルーキー・松川虎生捕手が「忘れられない」と振り返るこの試合は風の強い夏のナイターゲームだった。
2対1で迎えた9回に同点に追いつかれたマリーンズは、その裏に岡大海外野手のサヨナラヒットで劇的な勝利を手にした。しかし、歓喜に沸くマリーンズ戦士たちの横で、スタメンマスクを被った当時まだ18歳の青年の表情はさえなかった。
勝利こそしたものの、自分のせいで同点に追いつかれてしまった。そんな後悔の念が全身を覆い、目を潤ませた。悔しさ、自分へのいら立ち、プロの厳しさ……さまざまな想いがこみ上げてきたのだろう。
松川があの9回表を振り返る。
守護神・益田の暴投「あれは自分のミス」
マリーンズはマウンドに守護神・益田直也投手を送り出した。2死一、二塁の状況で迎えた打者はファイターズ万波中正外野手。松川は初球にスライダーを要求したが、万波が見逃したこの低めの球を松川は横に大きく弾いてしまった。ボールは三塁側のベンチまで転々とし、走者はそれぞれ進み二、三塁に進塁。その直後に左前タイムリーを許して、同点とされてしまうのだった。
記録は暴投。しかし、松川はボールを前に落とせず、大きく三塁側に逸らしてしまったことを自分のミスと猛省した。その裏に歓喜が訪れようとも、先輩たちの歓喜の輪に笑顔で加わることはどうしてもできなかった。そして、ベンチに一人、残った。ロッカーに戻ることが憚られた。みんながいる場所に戻る前に気持ちを落ち着かせようとしたのだ。自然と涙が目からこぼれる。忘れられない一日となった。