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栗山英樹監督が立てていた「WBCで世界一」の“フラグ” とは? 大谷、ダルビッシュ…史上最強のスター軍団を束ねる指揮官が描く「物語」 

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木下大輔(日刊スポーツ)

木下大輔(日刊スポーツ)Daisuke Kinoshita

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/12/25 06:00

栗山英樹監督が立てていた「WBCで世界一」の“フラグ” とは? 大谷、ダルビッシュ…史上最強のスター軍団を束ねる指揮官が描く「物語」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

サッカー日本代表の森保監督に続き、同じ人情派の栗山監督が来春、日本中を熱くする?

 ラスト采配は5-3で勝利した。伊藤も10勝目を挙げた。そんな野球の神様が用意していたラストシーンを受けて、栗山監督は試合後、ウイニングボールを手渡しに来た伊藤へメッセージを伝えた。

「『返す。200勝の時、もらう』って言った。最初の10勝のボールは大海が持っていた方がいいし、ほんとに冗談じゃなくて『200勝を目指してくれ』って。『このボールの中に俺の魂、込めたからな』って、返した」

 そのセリフは、栗山監督の脚本なのか、野球の神様に引き出されたのか――。それは栗山監督のみぞ知るところだが、勝負どころで繰り出す言葉のチョイスや起用法で選手の本能を引き出すのが栗山流。どんな選手とも分け隔てなく、熱い物語を紡いできた。

 だから、選手のヒーローインタビューを見ながら、目頭を熱くすることも多い。監督1年目の12年、開幕投手に指名した斎藤佑樹が開幕戦で完投勝利した時がそうだった。開幕から4番を任せた中田翔が5試合連続無安打と苦しむ中で放ったシーズン初安打初本塁打の瞬間は、試合中に涙を拭った。さらに、シーズン終盤には最優秀中継ぎ投手のタイトルを確定させた増井浩俊が、お立ち台で「使ってくれる監督のおかげです」と話すのを聞いた時には、「中継ぎには無理をさせてきて、いろいろあった。迷惑もかけている。申し訳なさ、だから」と目を潤ませていた。

「ユウキ」や「ショウ」…名前で呼ぶ栗山流

 数々の涙には、それぞれの選手とともに歩んできたストーリーが含まれている。コミュニケーションは常に密だ。「ユウキ」や「ショウ」など選手をファーストネームで呼ぶのも、心を通わせるキーポイント。選手を奮い立たせるものを見極め、あえて試練を与える。それを選手たちが乗り越えていく姿は、きっと想像を超えていくのだろう。それこそ、栗山監督が信じて止まない「野球の神様」から贈られた感動だ。

 栗山監督は「感動は推進力」と言う。心を動かされる場面が多ければ多いほど、不思議とチームも強かった。日本一に輝いた2016年も、大谷翔平のリアル二刀流での躍動や、西川遥輝が日本シリーズで放ったサヨナラ満塁本塁打など、込み上げるシーンは数知れず。やっぱり、栗山監督の野球には、物語が必要なのだ。

【次ページ】 WBCへ向けて、張られた伏線とは?

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